三笠

全体的なデザインは羊をモチーフにしているらしい（Febri2018年3月号にて、原案・ディレクションを担当したEnka氏へのインタビューで明かされた）。
「三笠は、腕を何度も直してようやく決まったのが印象深いです。
　今の、グッと胸元に置くポーズが、宣誓しているようにも、何か決意しているようにも見えて、とても気に入っています。
　毅然としながらも、優しい一面も表現できたかなと思っています。
　羊の雰囲気も持たせようと思ってデザインしました」
とのこと。

砲を3種類積めるが、これは三笠が前ド級戦艦、つまり砲の口径を揃えて一度に撃つ「斉射」という戦術が考案される前の軍艦であり
その時代の軍艦は、とにかく積める場所に積めるだけの様々な砲を載せて各砲塔が各自の照準で撃っていたことに由来すると考えられる。
ちなみに手に持ってる刀は儀礼刀で三笠の砲塔の残鉄から作られた三笠刀と呼ばれるもの。台詞も司令官である東郷平八郎のものが多い。

同じくロイヤル製の後輩である金剛は頭部の角が飾りらしいが、三笠もそうなのだろうか?

Z23「掃除なら饅頭に任せたらどうでしょう？」
三笠「それも考えたが、我のモデルを勝手に持ち出されては困る」
綾波「饅頭たちはアマノジャク、ですね」

後輩の頼みを断れない大先輩でした。
それとも……？

アヴローラ「Здорово！ミカサ、今度私にも見せてもらってもいいでしょうか？」
三笠「そ、そうだな……良かろう！」

（布地の件まで拾ってくださって）誠に申し訳ございませんでした……

• 大日本帝国海軍が保有した敷島型戦艦の4番艦。『六六艦隊計画』により建造された、前弩級戦艦である。艦名の由来は奈良県奈良市に位置する三笠山から。
  春日大社の東にあり、山頂には春日大社本宮神社が祀られている。768年、白鹿に乗った鹿島神が三笠山に降臨し、春日神社を建立した事から841年以降は神域として狩猟伐採が禁じられた。
  • 本人は「弩級戦艦三笠」と言い張るが、これは「三笠」の勘違いor思い込み。或いは強がり。若い者には負けん！
    ドレッドノート（1906年12月2日竣工）に由来する「弩級（ド級）戦艦」の最低条件は、中間砲や副砲を装備せず単一大口径砲多数を備えること。
    敷島型戦艦はイギリスの保有するマジェスティック級戦艦の改良型に当たり、当時としては世界最新鋭・最強格の戦艦であったが、
    1906年以降ドレッドノートに端を発した弩級戦艦が登場したことで完全に旧式化した。ゆえに敷島型戦艦はどう頑張っても弩級戦艦にはなれない。
    日本で最初の弩級戦艦は、一般に河内型戦艦の河内と摂津とされる。薩摩型戦艦とする人もいて、激論になる。
• 敷島型は、1番艦が「敷島」、2番艦が「初瀬」、3番艦が「朝日」、4番艦が「三笠」。
  末妹の「三笠」は色々と改良が加えられている。最大の特徴は煙突。長女（敷島）と次女（初瀬）は三本煙突だが、三女（朝日）と四女（三笠）は二本煙突。
  更に、「敷島」「初瀬」「朝日」には軽量強靭なハーヴェイ鋼が使われたが、三笠にはハーヴェイ鋼を上回る防御力のクルップ鋼が使われている。
  • 『六六艦隊計画』とは、9年の間に戦艦6隻、装甲巡洋艦6隻を建造し、更に海軍兵員も3倍弱増員するという計画である。
    仮想敵であるロシア帝国に対抗するため、この計画には莫大な予算が注ぎ込まれ、海軍の拡充が図られた。
• 建造は英国ヴィッカース社。1899年1月23日、軍艦三笠と命名。翌24日にバロー・イン・ファーネス造船所で273番船として起工し、1900年11月8日に進水。
  1902年3月1日に竣工、同日日本海軍に引き渡される。その後、スエズ運河を経由して5月18日に横須賀に到着、連合艦隊の一員となる。
  • 当時、英国と日本は共にロシア帝国を仮想敵とみなしていた。そのため、日英は外交上協力関係にあり、1902年には日英同盟も締結している。
  • 三笠の発注には莫大な予算が必要となったが、時の海軍大臣である西郷従道と、海軍官房主事である山本権兵衛により他の予算からの流用が行われ、建造費が賄われた。
    この事は当然憲法違反であるが、2人は「国の大事の前には三笠を完成させる事こそが重要」と考え、発覚した際は切腹して責任を取る覚悟であったと言われている。
• 1903年12月28日には連合艦隊旗艦に任命。第一艦隊指揮下に第一戦隊を編成した。

• 1904年2月6日、日露戦争が勃発。東郷平八郎大将が率いる連合艦隊は戦艦6隻（富士、八島、敷島、初瀬、朝日、三笠）を揃えてロシア帝国太平洋艦隊との戦闘に入る。上で述べているとおり、
  当時の日本海軍が誇る戦艦6隻は、全てイギリス建造艦である。日本語の方が片言だったんじゃ…。戦艦をサポートする装甲巡洋艦は、イギリス艦（出雲、磐手）、フランス艦（吾妻）、
  ドイツ艦（八雲）、イタリア艦（日進、春日）と国際色豊か。当時の帝國海軍は産声を上げたばかりで建艦のノウハウが乏しく、他国からの購入に頼っていた事情が窺える。
• 8月10日、黄海海戦が生起。帝国陸軍の砲撃で旅順港からの脱出を決意した現地の艦隊がウラジオストクへの脱出を図ったが、旅順艦隊の撃滅を狙っていた連合艦隊が待ち伏せていて戦闘になった。
  旅順艦隊は脱出を第一に考えていたため激しい抵抗は行わなかったが、それでも砲戦で藤瀬中尉や品川中尉、畑少尉など数名の下士官が戦死している。海戦の結果、旅順艦隊は撃破され事実上壊滅。

• 1904年2月9日から、旅順にてロシア帝国艦隊を攻撃した。
• 5月15日、旅順沖合で旅順港封鎖任務中の連合艦隊は大事件に遭遇する。装甲巡洋艦「春日」（イタリア建造艦）と衝突した事で、防護巡洋艦「吉野」（イギリス建造艦）が沈没。つづいてロシア海軍の機雷で姉妹艦の「初瀬」（イギリス艦）が轟沈、敷島型前級の富士型戦艦「八島」（イギリス艦）も浸水が止まらず沈んでしまった。日本海軍はわずか1日で戦艦2隻、防護巡洋艦1隻を失うという目に遭ってしまう。とんでもない厄日である。日本海軍全体が浮足立つ中、泰然としていたのは三笠の東郷平八郎だけだったという。
  • 日本は初瀬轟沈こそ公表したが、静かに沈んだ八島は奇跡的に戦死者0だったので、八島沈没を公表しなかった。ミッドウェーでも同じようなことを…。
    ロシア側はなぜか「三笠も沈んだ」と思い込み、バルチック艦隊の旗艦スワロフで「敵艦隊の先頭の旗艦は三笠です」「三笠は沈んでる、あれは朝日だろう」なんてやりとりがあったとか。
  • 後年、珊瑚海海戦でレキシントンとヨークタウンに麾下の空母祥鳳を撃沈された井上成美中将（第四艦隊司令長官）は、「初瀬と八島を失ったときの東郷長官は、内心はともなく平然としていた。俺も見習わねば」と思い出して頑張ったという。
• 三笠最大の幸運は、8月10日の黄海海戦で訪れる。連合艦隊はいわゆる『丁字戦法』を試み、不完全ながらもおおむね成功した。それによって旅順からウラジオストクに移動を開始したロシア旅順艦隊を迎撃したが、ウラジオストクに逃げることが目的のロシア旅順艦隊は、連合艦隊の誘いにのらず逃走。旅順艦隊殲滅を夢見ていた連合艦隊は、撃ち合いどころか「逃げる旅順艦隊を追いかける」展開になった。
  ロシア旅順艦隊の戦略目標は「ウラジオストクに入港し、後に来るバルチック艦隊と協力して連合艦隊を挟み撃ちにする」事なので、判断は間違っていない。
  連合艦隊が焦り出す中、三笠艦橋の東郷だけが平然としていた。この時、奇跡が起きた。午後6時37分、「三笠」の主砲弾が旅順艦隊旗艦の戦艦「ツェサレーヴィチ」の艦橋を直撃。旅順艦隊長官ウイトゲフト少将や艦長を吹き飛ばす。さらに致命傷を負った操舵手が舵輪にもたれかかり、ウラジオに向け直進していた「ツェサレーヴィチ」は左に回頭。事情がわからぬ後続艦は、先頭艦（旗艦）の運動に追従して反転、みすみす連合艦隊の射程に入ってしまった。撃沈艦こそいなかったが、旅順艦隊は旅順に逃げ戻る。旅順艦隊がウラジオストクに到着していたら、日本は旅順艦隊とバルチック艦隊に挟み撃ちにされるところだった。
  後の時代から見れば、黄海海戦の三笠の一弾こそ、日本の歴史を変えたといっても過言ではない。
• 黄海海戦に勝利した「三笠」だが、敵弾17発が命中して満身創痍の体となった。
  戦闘終盤、「三笠」の後部砲塔で爆発事故がおきる。主砲弾が砲身の中で爆発したのだ。砲台長の伏見宮博恭王少佐は「名誉の負傷」を負った。
• 1905年5月27日、東郷平八郎長官率いる連合艦隊は、対馬海峡でロシア帝国のバルチック艦隊を迎撃する。
  第一艦隊、第二艦隊、第三艦隊から成る連合艦隊の主力艦（戦艦、装甲巡洋艦）を紹介しよう。この他に海防艦、巡洋艦、駆逐艦がいっぱいいる。
  • 第1戦隊：三笠、敷島、富士、朝日、春日、日進、龍田（通報艦）
  • 第2戦隊：出雲、吾妻、常磐、八雲、磐手、浅間、千早（通報艦）
  • 一方のバルチック艦隊には巡洋艦アヴローラがいた。
• 東郷長官は「三笠」から『敵艦見ユ...』『...本日天気晴朗ナレドモ浪高シ』と電文を打電した後、連合艦隊を率いてバルチック艦隊との交戦に入る。
  「三笠」に乗艦していた東郷平八郎提督はZ旗を掲揚し、「皇国ノ興廃、コノ一戦ニ在リ。各員一層奮励努力セヨ」と各員を激励、直後、「三笠」を先頭に単縦陣のまま、味方艦隊に敵前大回頭を命じる。先の黄海海戦で安全をとった『丁字戦法』により、旅順艦隊に逃げられた苦い経験を生かしたのだ。敵の目の前で進路を変えたことで、「三笠」は敵艦隊に腹を晒すこととなり、無数の砲弾が撃ち込まれた。
  しかし、「三笠」が砲撃を引き受けたことで、他の艦はほぼ無事に回頭を完了。まもなく連合艦隊は完全な丁字戦法の形を取り、最大火力でバルチック艦隊を砲撃し始める。砲火に包まれたバルチック艦隊は戦力を大幅に減じ、翌28日に潰走。日本海海戦は連合艦隊の完勝に終わる。
  • 丁字戦法の壁に回り込まれた状態を『対馬トラップ』と呼ぶこともある。引くことも進むこともできなくなったバルチック艦隊は次々と沈み、アヴローラを含む4隻だけがどうにか逃走に成功した。
• この「日本海海戦」は長い海戦史でも前代未聞の完勝劇であり、アドミラル・トーゴーと連合艦隊旗艦「三笠」の勇名は全世界の海軍、造船関係者に知れ渡ることとなる。特に三笠を建造したヴィッカーズ社はこの活躍を誇りとし、後に金剛型の建造を発注された際も日本側に最大限以上の協力を惜しまなかった。
  • 三笠が産声を上げた英国のバロー・イン・ファーネス市には「Mikasa Street」と名付けられた50mの区画があり、後に日英が対立することになっても名は変わらなかった。今でも三笠に関する資料の一部が保管されている。
• この勝利は当時、「日本がロシアに勝った」という単純な事実にとどまらず、「後進の、当時差別されていたアジアの小さな島国が強大な列強の帝国主義国家に勝利した」という、非常に大きな意味を持った。

• 日露戦争終戦後の1905年9月11日、佐世保港内で停泊していた「三笠」は突如爆沈する。
  アルコールや火薬の不始末が原因と言われているが、詳細は不明。この事故で339名の死者を出す事となる。東郷平八郎長官は、報告のため東京に向かい「三笠」を離れていたので無事だった。明治天皇が親閲しての凱旋観艦式で連合艦隊旗艦を務めたのは「敷島」、天皇御召艦は装甲巡洋艦「浅間」（イギリス建造艦）だった。
• 「三笠」は1906年8月8日に浮揚作業着手、8月14日に浮揚成功。2年後の1908年4月24日に修理完了。第一艦隊旗艦に復帰した。
• 1914年からの第一次世界大戦にも参戦し、日本海において警備任務に従事する。また、社会主義政権のソビエト連邦が成立した際は、これを牽制すべくシベリア出兵にも参加している。砕氷艦に改造されていた海防戦艦「見島」（元バルチック艦隊のアドミラル・セニャーヴィン）とコンビで出動したが…。詳しくは『尼港事件』を検索してほしい。この出動前、三笠は水上飛行機を搭載した。
• 1920年9月1日、「三笠」は戦艦から海防艦に艦種変更された。太平洋戦争中の小型護衛艦ではなく、老朽化した軍艦の総称としての海防艦である。
  海防艦「三笠」になった直後の9月16日、ウラジオストック付近で座礁した。損傷は深刻で、完全に修理する価値はなしと判定される。長門型戦艦や加賀型戦艦を建造する頃だからね…
• 1922年のワシントン軍縮条約により、「三笠」の廃艦が決定する。
• 1923年9月1日、「三笠」は横須賀で関東大震災に遭遇。天城型巡洋戦艦1番艦の天城（赤城の姉）は建造中に大破。岸壁に係留されていた「三笠」は高波で古傷から浸水、着底した。なんの因果か、横須賀で廃艦処分を待っていた加賀型戦艦1番艦の「加賀（空母）」は無事だった。
• 9月20日付で除籍され、武装撤去がはじまる。完全に解体される予定だったが、国民の間で記念艦としての保存運動が湧き起こった。
  「皇国の興廃この一戦（いっせん）にあり」という名言にちなんで、小学生たちは「一銭（いっせん）」を献金したという。
  1925年から横須賀にて記念艦としての工事が開始、船体を砂とコンクリートで固定し、これ以降は記念艦・保存艦として展示される事となった。
  全世界でこれ一隻、現存する唯一の前弩級戦艦であり、船体は皇居の方角に向かって固定されている。

三笠は、日本海軍の歴史を語る上でかかせない人物2人と深い関係がある。
1人は、連合艦隊旗艦「三笠」から指揮をとり、伝説となった東郷平八郎。もう1人は、東郷平八郎の部下として「三笠」で戦った皇族の伏見宮博恭王だ。

• 日本海海戦で大勝利を得て「軍神」となった東郷平八郎。明治天皇・大正天皇から篤く信頼された伏見宮博恭王。
  伏見宮博恭王は皇族でありながら理想的な海軍軍人で人望も厚く、しかも最前線に出て東郷平八郎の部下として黄海海戦に参加、「あの栄光の三笠」で負傷。三笠で神格化された東郷平八郎元帥と、軍令部総長となった伏見宮博恭王のコンビは『宮様と神様（殿下と神様）』といわれ、権勢をふるった。
  • 伏見宮体制（軍令部の権限強化）を批判してクビ寸前だった井上成美を、「井上には見どころがある」と救い、比叡艦長に推薦したのも伏見宮博恭王。当時の比叡は練習戦艦に格下げされていたが、そのおかげで昭和天皇や満州国皇帝溥儀など皇族の御召艦になることが多く、とうぜん井上艦長の経歴にも箔がついた。
  • 海軍良識派として知られる米内光政も、伏見宮博恭王のお気に入りだった。米内は長門艦長、連合艦隊司令長官、海軍大臣、内閣総理大臣を歴任し、博恭王引退後は軍令部総長の予定だった人物。

• シベリア出兵時の「三笠」は横廠式ロ号甲型水上偵察機という水上偵察機を搭載していた。
  後年の戦艦や巡洋艦のようにカタパルトからの射出ではない。クレーンで海面におろして発進させ、回収手順も同様。時の海軍大臣加藤友三郎に提出された『三笠飛行機隊行動概要報告』という報告書には、三笠の甲板で組み立てられた飛行機の写真が残っている。

• 「三笠」が本格的に飛行機と接したのは、水上機母艦「若宮（若宮丸）」が出来てからだろう。若宮は1913年の演習に水上偵察機を搭載して参加、その後、第一次世界大戦に水上機母艦として実戦参加した。
  「三笠」が現役だった頃の1920年4月1日、若宮は「航空母艦」に改称された。日本海軍の栄光ある空母第1号だ。当然、現役の「三笠」も空母という艦種を知っている。
  空母第2号の鳳翔は、 横浜の浅野造船所1920年12月16日起工、1921年11月13日進水。横須賀海軍工廠で仕上げを行い、1922年12月27日竣工。なので最晩年は横須賀にいた「三笠」とは、明らかに面識がある。
• が、当時艦載機といえば複葉機だし、当然ながら空母機動艦隊や航空機の集中運用の有用性が証明される遥か以前の話でもあるので、三笠は飛行機を「オモチャの類」と評しているのであろう。

• 記念艦「三笠」の終の棲家となった横須賀も、飛行機と空母に深い縁がある。
• まず「三笠」は、関東大震災に端を発した空母2隻（天城、加賀（空母））の因縁を見届けた艦である。
  空母になるはずだった天城型巡洋戦艦「天城」は地震で大破、修理不能と判定され解体。そして、処分されるはずの加賀型戦艦「加賀（空母）」は、「三笠」の目の前で空母になった。
• 基地航空隊といえば、有名な横須賀海軍航空隊と海軍航空技術廠（今の追浜飛行場）があった。
  練習機も実戦飛行隊も試作機も含めて、色々な飛行機が記念艦「三笠」の上をブンブン飛び回っていた。
• 日本海軍の空母に目を転じると、これまた横須賀海軍工廠建造艦ばかり。
  • 龍驤は船体こそ横浜船渠建造だが、空母としての仕上げは横須賀でおこなった。
  • 龍鳳、祥鳳、瑞鳳は「潜水母艦として建造後、こっそり空母に改造する」ことを前提とした艦船。この3隻も横須賀で建造され、横須賀で空母になった。
  • 中型空母の飛龍は、横須賀で建造された。
  • マル3計画の翔鶴は、横須賀で建造された。
  • 雲龍型航空母艦の雲龍は、横須賀で建造された。
  • 水上機母艦千代田は、横須賀で空母に改造された。
  • 大和型戦艦3番艦の「信濃」は、そもそも横須賀で建造され、ミッドウェー海戦を機会に空母に改造された。
    記念艦「三笠」は、「信濃」の起工も、進水も、竣工も、初めての旅立ちも、全て見届けた。

• そして第二次世界大戦。1942年4月18日、アメリカ軍は空母ホーネットとエンタープライズ（空母）によるドーリットル空襲を敢行する。
  ホーネットから発進したB-25爆撃機のうち、1機は横須賀軍港にやってきた。「三笠」の真上から投弾を開始、空母に改造中の大鯨（龍鳳）に直撃弾をあたえた。
• ドーリットル空襲から間もない5月25日。工作艦として活躍していた姉妹艦「朝日」は、シンガポールで「那珂」の修理をおこなったあと内地に戻る途中、潜水艦の雷撃を受けて沈んだ。
• 太平洋戦争最終盤、日本本土はB-29によって空襲される。さらに日本近海まで進出してきた機動部隊から、艦載機もやってくる。練習艦（浮き校舎）として余生をおくっていた同僚の「富士」「春日」は空襲を受けて沈み、
  「敷島」も終戦後に解体された。「三笠」はついに姉妹2隻（敷島、朝日）を失った。「三笠」は大きな損傷を被ることは無かったが、終戦後に連合軍命令で艤装の殆どを撤去され、
  三笠を持て余した横須賀市から湘南振興という会社に払い下げられてキャバレーや水族館として運用されるという憂き目に遭った。
  また湘南振興は船体から甲板材や金属などを剥ぎ取って売却するなどし、三笠は荒廃する一方であった。
• 極東委員会でソ連のテレビヤンコ中将は解体を主張したが、アメリカのウィロビー陸軍少将は「日本人の反感は避けるべき」として反論した。

• かつての敵将チェスター・ニミッツ提督は、少尉候補生時代に東郷平八郎提督と交歓した事がきっかけで、彼を尊敬していた。その東郷提督の三笠にも当然敬意を払っていた。
  ところが進駐軍が三笠で好き勝手に暴れていると聞くとニミッツ提督は激怒し、歩哨を立たせている。
• アメリカ海軍のチェスター・ニミッツ提督を始めとする有志は、かつて東郷提督の乗艦として日露戦争を戦い抜いた殊勲艦の惨状を憂い、湘南振興からの三笠奪還と保存の運動を展開。日本政府も予算を承認し、1959年から復元工事が開始。チリ海軍から退役したイギリス製超ド級戦艦アルミランテ・ラトーレの部品を譲り受けるなどして工事は進み、1961年に復元が完了。再度記念艦として運用される事となった。

• 現在においても保存は続けられており、神奈川県横須賀市の三笠公園にて、その姿を見ることが出来る。
  所有しているのは日本の防衛省だが、民間の三笠保存会が管理を受託。わずかな防衛費と公園の入場料などで保存が成り立っている。
• 横須賀の海上自衛隊には「三笠研修」があり、時には来賓を招いて日米合同でこれを行う。
• 戦後の船体復元から約50年ほど時が流れた2009年、アメリカ空母ニミッツが横須賀を訪れた際に、乗員が記念艦三笠の清掃と塗装をボランティアで行ってくれた。艦名の由来となったチェスター・ニミッツ提督の遺志を受け継いだのである。

• 三笠自身が英国生まれであるというのもそうだろうが、この場合原因となったのは三笠と関わりの深い東郷平八郎の影響によるものだろう。
  1870年(明治3年)から1878年(明治11年)の8年もの間を英国のポーツマス市への留学で過ごしている。
  • これに関わる都市伝説に｢東郷平八郎が肉じゃがが出来るきっかけになった｣というものがある。
    留学期間中に食べたビーフシチューの味を気に入った東郷が艦内食として料理長に作るように命じたが、その際に使われていた材料や大まかな見た目のイメージしか伝えなかった。
    そのため料理長は足りない味付けの調理手順を砂糖や醤油で整え、出来上がったのが肉じゃがであるという話である。
    • 実際のところは当時既にビーフシチューや派生系のハヤシライスが洋食屋の一般メニューとして出回っており、牛肉を醤油や砂糖で煮るという調理法も牛鍋や牛肉の大和煮で用いられていた。真相は舞鶴市が｢肉じゃが発祥の地｣であると宣伝するために流されたジョークとされている。
      この辺りから呉と舞鶴の間で発祥地を巡って長らく続く悶着があったのはまた別のお話
    • 舞鶴側の主張するレシピは男爵芋だが、呉の主張レシピはメークインを使うという違いがある。
      またカレーと同じ材料で作れることもあって補給面で便利だったため重宝されていたようで、部隊や艦単位で数多のレシピが確認されている。

三笠となると何かとZ旗について言及されるが、実はZ旗には掲げると不幸が舞い降りるという謎のジンクスが存在する。我々が良く知る戦艦「大和」は、レイテ沖海戦で第二艦隊旗艦（栗田艦隊旗艦）としてZ旗を掲揚し、散々な目にあった。
また航空母艦にして日本で唯一の装甲空母「大鳳」も、初陣となるマリアナ沖海戦にてZ旗を掲揚するものの、本格的な戦闘に参加する前に魚雷による損傷を受けそのまま沈没した。Z旗では無いが、真珠湾攻撃の際に同じ意味を持つ信号旗(DG旗)を掲揚した航空母艦「赤城」も、その後ミッドウェー海戦にて沈没している。

ここまで来ると正に「現物の死亡フラグ」であるが、つい最近も艦艇繋がりでは無いがやらかしている。
2017年11月12日に横須賀にある防衛大学校にて行われた2017年度開校祭にて、所属大隊同士が競い合う恒例行事「棒倒し」で決勝まで勝ち進んだ第四大隊がZ旗を掲げて入場、しかし決勝戦は対戦相手である第二大隊の勝利に終わった。

勝利セリフは元号「大正」の元になった易経の一節である。

砲撃戦を行うのに最適とされている丁字戦法だが、実の所、まともに成功したのは日本海海戦も含めてたったの3回だけである。
丁字戦法が企図された海戦とその結果は以下の通りである。

• リッサ海戦・・・オーストリア海軍がイタリア海軍の側面から単縦陣で突撃したので、イタリア海軍が丁字戦を行う形になったが、陣形の優勢を生かす事が出来ず敗北。
  この際、オーストリア海軍が衝角（ラム）攻撃で勝利した事から、イギリスとアメリカでラムアタック専用艦というトンデモ艦が開発された。
• エリ海戦・・・・第1次バルカン戦争の時にオスマン帝国海軍とギリシャ海軍の間で発生した海戦。ギリシャ海軍が丁字戦法に持ち込んでオスマン帝国海軍の旗艦を中破させ、混乱したオスマン海軍を撃退している。しかし、艦隊の殲滅には至らなかった。
• 黄海海戦(日露戦争)・・・・旅順港外に逃げようとするロシア太平洋艦隊を阻止するため、日本艦隊はロシア艦隊の進路を妨害すべく丁字戦に持ち込む。が、二度丁字に持ち込んだもののいずれも艦隊後尾からすり抜けられた。
• ユトランド沖海戦・・・・第1次大戦中期に発生した史上最大の戦艦同士の艦隊決戦。イギリス本国艦隊「グランドフリート」はドイツ大海艦隊を2度に渡って丁字に引き込んだが、大海艦隊が反対方向に離脱した事で失敗に終わっている。

このように丁字戦法は非常に難しい戦法で、艦隊運動中に成功させる確率は極めて低かった。
さて、日本海海戦以外の2度の成功例はというと・・・・あのサボ島沖夜戦とスリガオ海峡海戦だったりする。
この２つの海戦の結果がどうなったかは、書くまでもないだろう。

末尾の番号が若いほど、古いログになります。

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