親潮

• 1938年3月29日、舞鶴海軍工廠にて起工。同年9月20日に当時の海軍大臣により親潮と名付けられ、11月29日に進水。尚、同日の工廠には高雄と愛宕等が修理整備中、長兄の陽炎が建造中であり、姉より先に進水している。進水を記念して舞鶴工廠付近の郵便局では当日限定で進水記念日付印が押された。1940年8月20日に竣工し、呉鎮守府所属警備兼練習艦となった。

• 1941年1月27日、姉妹艦の黒潮と雪風とで第16駆逐隊を編成し、8月31日に早潮・夏潮が完成して同日付で第15駆逐隊を編成。戦争の足音が目前に迫ってきていたため、戦時編制で11月15日に第15駆逐隊は第2水雷戦隊に編入。その後、黒潮が加わって第15駆逐隊は4隻体制となった。第2水雷戦隊はフィリピン攻略を担当する比島部隊へと編入され、11月26日に旗艦神通に率いられ、寺島水道を出発。12月1日、パラオに入港。そして開戦直前の12月6日、フィリピン南部の重要拠点ダバオを攻略する輸送船団を護衛して出港。上空には龍驤の艦載機が旋回し、援護を行ってくれた。
  　　
• 1941年12月8日に大東亜戦争が生起。開戦と同時に龍驤がダバオへ空襲を行い、マララグ湾に敵の水上機母艦ウィリアム・B・プレストンを発見したと報告。敵艦は爆撃から逃れようとして湾外へと出てきた。親潮はこれを追跡したが、振り切られてしまっている。12月10日、黒潮とともに海防艦厳島をサンベルナルジノ海峡へ護衛した。12月11日、洋上で高木少将は第2水雷戦隊にダバオの攻略を下令。現地の邦人2万人の保護と防備の薄さが攻略を踏み切らせた。司令の田中頼三少将は旗艦神通と第15駆逐隊を率いて12月14日早朝にパラオへ入港。陸軍の坂口支隊と協議に入った。脅威だったプリンス・オブ・ウェールズとリパルスが討ち取られた事で予定を繰り上げ、12月20日を作戦日と定めた。12月17日、ダバオへの上陸作戦を支援するためパラオを出撃。午前8時25分、黒潮が潜水艦を探知して14発の爆雷を投下した。12月19日13時12分、神通が敵潜を発見して再び黒潮が対潜掃討を行っている。味方に被害は無く、12月20日にダバオ上陸が開始される。翌21日16時、親潮はダバオ湾をパトロール。19時30分にマララグ湾で短時間停泊したのち、バンダサン湾に停泊。12月22日午前10時30分、敵機がマララグ湾を攻撃してきたが親潮に被害は無かった。12月23日、次はホロ島攻略のため出撃。午前10時5分、B-17から攻撃を受ける。親潮は無傷だったが、黒潮が機銃掃射で損傷した。25日、ホロ島攻略作戦を支援。12月26日14時、輸送船を護衛して出発し、ダバオに入港。マララグ湾の警備につき、年内はそこで過ごした。12月28日夜、運送船北上丸から食糧の補給を受ける。
  　
• 1942年1月27日午前9時45分、ウウニ島近海で敵飛行艇1機を発見し通報。翌28日15時、バンカ泊地に到着し補給を受ける。だが2月8日、輸送任務中に夏潮が米潜S37に雷撃され致命傷を負う。姉の黒潮が曳航しようとしたが、船体がV字に折れ沈没。さっそく1隻が欠けてしまった。これに伴って、親潮は第15駆逐隊の司令駆逐艦となる。2月15日、給水船朝山丸から真水の供給を受ける。2月24日、第二水雷戦隊旗艦神通に横付けし、食糧品の補給を受ける。矢継ぎ早に作戦は続き、親潮はクーパン攻略作戦とジャワ南東機動作戦に参加。2月27日にはスラバヤ沖海戦に参加し、ABDA艦隊の主力を壊滅に追い込んだ。3月5日16時10分、第一補給隊を護衛していた親潮と黒潮は、バタビア北東200海里においてハント改良型の英掃海艇を発見し砲撃。これを撃沈する。東南アジアから連合軍を一掃し、渇望していた資源地帯の確保に成功した。3月15日、艦底を損傷して佐世保に回航される加賀（空母）を護衛。4月17日に呉を出港し、カガヤンの攻略作戦を支援。
• 5月には珊瑚海海戦で大破した翔鶴を呉まで護送し、17日に到着。6月5日のミッドウェー海戦では水母千歳の護衛を担当。しかし主力の機動部隊が壊滅したため干戈を交える事無く退却。7月にペナン島で対潜哨戒任務を行い、同月20日に陽炎が編入再び4隻編成となる。8月7日、米軍がガダルカナル島に上陸し飛行場を奪取すると、第15駆逐隊もソロモン方面へ投入される事になった。餓えに苦しむ将兵を助けるため、鼠輸送に従事。だが敵軍も黙って見ているはずがなく、潤沢な物量と機動部隊を以って妨害してくる。10月14日、トラック島にて第十五駆逐隊は給油船健洋丸から燃料補給を受ける。10月26日、南太平洋海戦に参加。味方空母の戦闘支援を行った。

• 11月14日夜、第二水雷戦隊は輸送船11隻の護衛についていた。ところが米潜水艦の襲撃に遭い、生存者の救助に追われた。ちょうどその頃、ガ島近海では第三次ソロモン海戦第二夜が生起。飛行場砲撃を目指す霧島隊が、優勢なアメリカ艦隊と交戦する。第二水雷戦隊の駆逐艦11隻に応援へ来るよう電令が届くが、救助活動で手一杯な状況だった。そこで第15駆逐隊の親潮、黒潮、陽炎を分派し、応援に向かわせた。戦場に突入するも、既に乱戦状態となっていた。前方に、戦艦のような大型艦が現れた。霧島に似ている。旗艦陽炎は味方識別信号を送ったが、反応無し。接近し続けた結果、相手は大破したサウスダコタと判明。しかし魚雷を撃とうにも時機を逸していた。交差した後、慌てて背中を追うも砲煙の中に逃げられ、結局取り逃がした。11月30日、ガ島タサファロンガに揚陸するドラム缶240個を満載し、ルンガ岬沖に進出。8隻の駆逐艦で約300トンの物資を輸送した。積載量を増やすため、魚雷16本のうち予備8本を下ろす苦肉の策も使用している。目的地のタサファロンガにつき、ドラム缶を投入させ始めた頃、「集まれ、戦闘」の号令が下った。11隻の敵艦からなるライト艦隊の襲撃だ。出遅れた陽炎を除く各艦は、招かれざる客を相手に砲撃を開始。ルンガ沖夜戦が生起する。僚艦とともに魚雷を何本も発射し、米重巡部隊に壊滅的打撃を与えた。米重巡ノーザンプトンを協同で撃沈。さらにミネアポリス、ニューオリンズ、ペンサコーラを大破させる大活躍を見せた。突然の大損害に米艦隊は恐慌状態に陥り、味方の駆逐艦を敵と誤認して追い回し、戦線離脱させるという一幕もあった。
  陣形は瓦解し、艦隊はバラバラの群れと化した。この夜戦自体は日本側の勝利であったが、肝心な輸送船団は目的地に辿り着けず戦略的敗北を喫している。戦闘後、集中攻撃を浴びて沈没寸前の駆逐艦高波から乗組員を救助し始めたが、敵重巡が接近してきたため完了しないまま退却している。ちなみに接近してきた敵艦の正体は、大破していたペンサコラで戦闘能力は無かった。その後、高波は米艦隊より放たれた魚雷を喰らって沈没した。この敗報を聞いたハルゼー提督は、開いた口が塞がらなかったとか。
  • 海戦後、陽炎が戦果確認を行った。大本営発表では戦艦1隻、巡洋艦2隻撃沈と発表された。
• 11月24日、ラエ輸送中の早潮が空襲によって撃沈され、また3隻編成となってしまう。12月にムンダへの輸送作戦を行い、1942年を締めくくった。
  　
• 1943年1月下旬、呉に帰投し整備を受ける。同時に対空兵装が強化されている。3月に復帰し、重巡鳥海等を護衛して4月10日にトラックへ進出。6回に渡るコロンバンガラ輸送作戦に参加する事になり、親潮は1回目と3回目と5回目を担当。輸送1回目、4月28日午後8時にラバウルを出発。ブインを経由して翌29日午後11時30分にコロンバンガラ島に到着。大発16隻を使用して食糧や弾薬を揚陸。後送患者287名、戦死者58名を乗せて30日午前1時に離岸。復路を辿り、午前6時にショートランドに入港した。輸送3回目、5月3日午前4時30分にブカ島を出発。午前11時30分にブインへ寄港し、陸兵350名と物資14トンを積載。午後3時30分に出港する。午後10時50分、コロンバンガラ島に到着。約1時間で全ての物資を揚陸し、午後11時50分に離岸。翌4日午前5時5分に帰港した。そして輸送5回目、親潮は陸兵220名と物資18トンを積載し5月7日午後5時にブインを出発。翌8日午前1時頃、コロンバンガラ島に到着。当日の天気は風雨が強く、視界が悪かったため入港が遅れ、揚陸用の大発が来ないトラブルがあった。それでも物資を揚陸し、午前3時10分に完了。帰路についた。順調に物資を運んでいたが、往路も復路も同じ航路だったため米軍に機雷を敷設される。そうとは知らず、同じ道を辿っていた親潮は機雷原に突っ込み……。
• 5月8日午前3時59分、米軍の機雷に触雷。爆発が生じる。僚艦と陽炎と黒潮は敵潜水艦の襲撃と思い、爆雷を投下しているが当然効果は無し。対潜のため駆け回っているうちに黒潮は3つの機雷に触れ、轟沈。陽炎も触雷して大破する。航行不能になり漂流する親潮。このままの状態で夜明けを迎えてしまう。午前9時19分、米軍機が襲来。トドメを刺すべく攻撃を仕掛けてきた。だが親潮も果敢に反撃し、至近弾1発のみで航空攻撃を防ぐ。天候不順に助けられ、執拗な攻撃は無かった。しかし親潮の命運はここまで、触雷から約14時間後の午後5時5分に沈没した。乗員81名が死亡。同日に黒潮や陽炎も沈没しており、第15駆逐隊は解隊された。1943年6月20日、除籍。
  • 生き残った乗員は、近くの無人島まで泳いで上陸、その後、大発によってコロンバンガラ島まで運ばれた。そこではウイスキーが振る舞われた。どうやら最後の輸送で、親潮たちが送り届けたものらしい。

末尾の番号が若いほど、古いログになります。

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