電

• 吹雪型駆逐艦の最終型こと暁型の一隻。特?型駆逐艦4番艦、特型駆逐艦24姉妹の末っ子「電」。
  • 特型駆逐艦の最終型だけあって随所に改良が見られる。空気予熱器を新たに装備し、缶を巨大化。代わりに缶そのものを三つに減らし、
    一番煙突を短くしている。特?型の漣を実験艦にし、良好な結果を残した新型ボイラーを搭載しており、これを搭載している艦が
    特?型に分類される。缶を減らした事で50トン軽くなったため、搭載燃料の増量を図った。特型の泣き所だった航続距離の短さが
    少し改善されたが、決定的な改善にはならなかった。新たに羅針艦橋に砲戦及び魚雷戦指揮装置を搭載。艦橋を大型化することで
    指揮能力の向上も図っている。要目は排水量1680トン、全長118.52m、全幅10.36m、速力28ノット、出力5万馬力。
    　
• 1927年度計画により一等駆逐艦の第58号駆逐艦として建造が決定。藤永田造船所にて1930年3月7日に起工。同月15日に電と命名。工事が進む
  1931年7月4日、海軍から竣工日の延期を求められる。理由は予算の削減により、官給品の一部の引き渡しが遅れるためだった。1932年2月25日に進水し、
  同年11月15日に竣工を果たした。艦名は「いなづま」と読む。決して「でん」ではない。竣工後、横須賀鎮守府に所属。姉妹艦の雷とともに
  第六駆逐隊を編成し、練習艦となる。12月1日、第一予備艦となる。
  • 特型駆逐艦の末っ子ではあるが、実は進水順で言うと下から3番目だったりする。帝國海軍は傑作の特型駆逐艦を主力に据えようとしたが、
    その特型駆逐艦を脅威に感じた米英はロンドン海軍軍縮条約で特型駆逐艦の生産を規制。電の建造を以って特型シリーズは打ち切られ、
    次に初春型が建造されるようになる。
    　
• 1933年3月3日、昭和三陸地震が発生。横須賀に停泊していた電は救援物資を積み込み、当日の午後に雷や神風、沼風とともに出港。
  翌朝に宮城県女川へ到着し、救援に当たった。11月15日、第六駆逐隊は第二艦隊第二水雷戦隊所属となる。
• 1934年5月18日、響とともに横須賀工廠で工事を受ける。艦橋に通風口を新設、煙突頂部に煤煙除覆を施した。6月29日夕刻、済州島南方海域で
  訓練を実施していた。霧や煙幕で視界が不良になる中、ついに悲劇が起きる。駆逐艦深雪との衝突事故が発生。深雪は真っ二つに裂けて沈没、
  電も第一砲塔から先を亡失し、駆逐艦白雲や巡洋艦那珂に曳航されて佐世保に帰港。応急修理を受ける。この事故で1名の乗員が死亡した。
  7月からは呉工廠に回航され、9月20日まで復旧工事を受けた。電の修理費は第二予備金から捻出された。また事故を起こす前の6月上旬、電は
  士官用の食卓物品を積載しているが実は代金未払いだった事が判明。第六駆逐隊司令部が補償を行っている。つくづく泣きっ面に蜂である。
• 10月27日、衝突事故の際に酒保の物品が流失。被害総額は547円に上っていた。第六駆逐隊司令部は、電にその損害額を負担するよう命じた。
  11月27日、横須賀工廠で機械室の海水管装置改造工事を受ける。

• 1935年2月28日午前3時14日、教練目的で有明湾から出港しようとしたところ操舵ミスにより、停泊中の駆逐艦旗風の艦首に衝突。またかよ。
  再び呉で修理を受ける羽目になってしまう。
• 1936年、性能改善工事を受ける。友鶴事件によって発覚したトップヘビーの危険性を抑えるため、巨大化させた艦橋を撤去。小型でシンプルな
  構造の艦橋に置き換えた。また艦底バラストを追加し、重量過多だった上部構造物を撤去して重心を低下させた。更に同年中に発生した
  第四艦隊事件で、特型の強度不足が露呈。速力の低下を甘受しつつ、安全性確保のため船体を強化。これらの工事により、特型の問題は
  ほぼ解消されたと言われている。

• 支那事変勃発に伴って1937年7月28日、第六駆逐隊は第四水雷戦隊に転属。9月5日には支那へ派遣中の第三艦隊所属となる。
• 1939年6月22日、敷設艦沖島等とマーシャル諸島を調査。
• 1940年11月15日、第六駆逐隊は第一水雷戦隊に転属。
• 戦争の足音が聞こえてくる1941年11月5日、第一水雷戦隊の南方方面への投入が決まる。佐伯湾で最終調整をした後、11月29日に第六駆逐隊は出港。
  翌30日、南西諸島南端を通過。各艦、無人島へ向けて主砲1発を発射した。冬だというのに南下するにつれ暑くなり、汗ばむ陽気となった。
  小雨が降りしきる12月1日、総員体操の号令が下された。この時は開戦前という事もあり、戦闘行為は禁じられていた。
• 12月2日午前9時、馬公に接岸。第六駆逐隊は二つの小隊に分けられ、電は雷を相方とした。電艦長の勝美基少佐は、雷艦長工藤中佐の中学校の
  先輩だった。12月4日、第二遣支艦隊の五十鈴の指揮下に入り、陸軍の香港攻略作戦を支援する事に。午後12時50分、在泊艦艇の登舷礼で
  見送られながら出港。6日早朝、香港沖滑石湾に進出した。雷とともに哨戒行動へ移った。この時、海上の様子は異様だった。港から次々と
  イギリス商船が脱出してくるのである。これは日本側の暗号を英国諜報部が解析し、攻撃を予見していたからだ。更に電と雷の周囲には無数の
  ジャンク船が集まり、航路を妨害。まるで包囲するかのように包み込んでくる。帝國陸軍からの報告によれば、「帆柱に吹き流しを巻いているものは
  宣撫班の影響下(つまり味方)」らしいが、情報が漏れていた事を鑑みると信用できない。支那戦線のように艦底に吸着機雷でも仕掛けられたら
  一溜まりも無い。2隻の駆逐艦はジャンク船に当てないよう威嚇射撃を加え、追い散らした。12月7日、大命降下。連合艦隊司令長官より「皇国の興廃は
  この一戦に在り」との電文が届いた。
  　
  1941年
• 1941年12月8日午前0時、大東亜戦争が勃発。艦内放送で米英蘭に対し武力行使を行う事が告げられた。午前5時、再び艦内放送で「連合艦隊は
  ハワイ大空襲に成功せり」と伝えられた。夜明けとともに香港の攻略が開始された。電は雷と協同で、入港準備中だったイギリス商船2隻を
  拿捕。ジャンク船に向けて機銃掃射を行い、雷や五十鈴と協同で砲艦シカダとロビンを撃沈している。港には逃げ遅れた船舶が取り残されており、
  これらの拿捕に協力。
• 12月10日夕刻、雷とともに木造の英哨戒艇セントモナンスを発見し、攻撃。これを撃沈せしめた。しかし哨戒艇を深追いし過ぎたため、
  敵陸上砲台の射程圏内に入ってしまい雷が至近弾を受けている。快進撃を続ける陸軍を支援するため、香港要塞のスタンレーに砲撃を加えるが
  射程距離が及ばず全然届かない(最大射程1万9500m)。逆にスタンレーには2万8000mもの射程を誇る20cm砲3門が睨んでおり、迂闊に近づけば
  撃沈される恐れがあった。このような要塞砲から反撃を受け、雷は3本の水柱に覆い隠された。電は雷が被弾したように見えたという。
  幸い3発とも命中しなかったが、砲撃の命中精度は徐々に上昇しており、4発目を受けたら被弾確実だった。このため2隻は煙幕を展開。この煙幕を
  被弾の白煙と勘違いした敵砲は砲撃を一旦中止し、この隙を突いて離脱した。
• 12月14日、補給のため万山(ばんざん)諸島へ移動。水の量は洗面器3杯分だが、入浴が許可された。この間にも戦況は変動し、断片的ながら
  電にも届いていた。12月16日午後1時、陸軍による香港爆撃が行われる。爆発音は重低音となって電を揺るがす。その後、ジャンク船の臨検のため活動。
  午後4時頃、突如ズシーンという音が連続して聞こえ、左舷10mに水柱が築かれる。敵の陸上砲台からの砲撃だった。ただちに戦闘配置のブザーが鳴り、
  迎撃準備を整える。どうやら臨検する際、知らず知らずのうちに陸上へ近づき過ぎたらしい。
• 12月20日、陸軍は総攻撃に出て陸上砲台を制圧したという。これに乗じて電と雷は、闇夜に紛れて突入を開始。ところが砲台は健在だっようで、
  2隻ともに砲撃を受ける。電は9発の至近弾を受けたが、作戦行動に支障は無かった。12月23日、河口付近で補給を受ける。東国丸からは重油を、
  安土丸からは食糧を受け取った。この日、入浴と洗濯が許可された。
  • 香港島の要塞は強固かつ約1万2000名の敵兵が半年間抵抗する予定で、そのための食糧も備蓄されていた。このため攻略は難航するかに
    思われたが、僅か18日目(12月25日)でイギリス軍守備隊は降伏した。水源地の失陥が決め手だった。12月25日夕刻、電は馬公に凱旋。
    大正天皇遥拝式を挙行したあと、乗組員には上陸が許可された。
• 12月26日午前9時、馬公を出港。別行動中の響や暁と合流すべく、高雄港に向かった。入港直前に敵潜水艦を探知したが、雷が撃退している。
  12月30日、リンガエン湾へ向かう第二次上陸船団を途中まで護衛。翌31日19時に船団と別れた。その後、高雄に一旦帰投。そこで蘭印方面の攻略作戦を
  支援する事になり、輸送船団や足柄を護衛して占領したばかりのダバオへ向かった。
  　
  1942年
• 1942年1月6日午前、船団や艦艇の集結地であるマグナガ湾に入港。同日午後に旗艦の足柄が入港し、蘭印部隊の各指揮官は参集して打ち合わせを
  行った。結果、作戦開始日を一日繰り上げて9日とした。予定通り9日、ダバオを出港。足柄や羽黒等とともにセレベス島メナドの攻略作戦を支援する。
  この日の天候は晴れ、海上は平穏だった。18時30分、カタリナ飛行艇3機が飛来し投弾してきたが被害は無し。1月11日午前1時10分、メナド上陸を開始。
  舟艇を降ろし、陸兵が乗艇を始める。午前3時15分に第一陣が出発、午前4時に上陸成功した。敵は上陸を知るや否や燃料タンクに放火して爆破、天を
  衝くほどの火柱が立った。陸は無抵抗だったが、空は大人しくなかった。日の出の前後から敵機が入れ替わり立ち替わりに襲来し、爆撃。泊地内は
  てんてこまいだった。無事メナドの攻略は成功し、1月14日午前3時に雷、那智、那珂とともにダバオへ帰投。電は雷と外港に留まり、17時まで
  警戒任務に就いていた。
• 1月20日16時5分、ダバオを出発。しかし21時46分に湾口で特設給糧艦仙台丸と衝突し小破(相手は中破)。急遽明石を呼び寄せ、横付けして
  応急修理を受ける。この騒ぎで足柄の護衛に駆逐艦曙が派出されている。翌21日、雷や第五戦隊とともにバンカ泊地を出撃し、ケンダリーの攻略支援を
  実施。1月24日午前8時42分に陸軍部隊を揚陸させ、17時に飛行場を占領した。敵軍の反撃は無かった。作戦後の1月29日、馬公へ帰投し入渠整備を受ける。
  2月18日、高雄で二日間の修理を受ける。2月21日、妙高を護衛して高雄を出港。マカッサルを経由してダバオに向かう。ジャワ島攻略作戦が間近に
  迫っていたため高速で南下している。2月25日17時40分、妙高とともにマカッサル到着。19時45分に足柄、雷、曙がマカッサルに入り、燃料補給。
  翌26日午前8時、ジャワ島攻略作戦支援のため足柄、雷、那珂が出発。妙高と電は補給が終わっておらず、追随できなかった。

• 2月27日午前3時、補給完了に伴って妙高とともに出撃。オランダ軍の本拠地ジャワ島を攻略するため、警戒を厳重にしながらジャワ海へ入った。
  午前7時15分、スラバヤ東北東海面で足柄や雷と合流。電は足柄の直衛につき、18ノットの速力で追随していた。その足柄から燃料補給を受ける。
  足柄は敵潜水艦を警戒し、20ノット以上の高速で移動するため、燃費に優れない特型駆逐艦の電は、燃料消費と補給に苦心した。13時30分、
  スラバヤから出撃してきた有力な敵艦隊が発見され、緊張が走る。これを撃滅するため、電らは現場海域に急行した。翌28日午前2時、戦闘海域に到着。
  そこには燃え盛る敵旗艦デ・ロイテルが残されていただけで、他に敵影は無かった。既に海戦は終わっていたようだ。
• 3月1日午前8時50分、重巡那智と羽黒、駆逐艦江風と山風の小艦隊が敗走する敵艦隊を発見して通報。午前11時50分、足柄と妙高、駆逐艦曙とともに
  現場に駆けつけ、スラバヤ沖海戦に参加する。午後12時45分、那智が旗艦エクセターに砲撃した事で戦闘が開始される。1万5000mまで距離を詰めると、
  エクセターに向けて12.7cm主砲を発射。攻撃はエクセターに集中し、やがて機関室に命中弾を受けて航行不能になった。命中弾が相次いだ事で、
  エクセターは炎上及び電力喪失。敵は艦の放棄を決断した。
• 生き残った敵艦の乗員は海へ飛び込んだ後、電の方へと泳いできた。エクセターでは「日本艦が救助してくれる」と日頃から言い伝えられて
  いたのである。それに応えるかのように電も「海上に浮遊する敵兵を救助すべし」と命令。縄梯子やロープ、救命ブイを使って敵兵が拾い上げられ、
  合計376名を救助した。敵兵のズボンや靴下は純毛で、物資が有り余ってる様子が窺えた。救い上げられると、英国兵は短く「サンキュー」と言って
  白い歯を見せたという。
  • グレム・アレン大尉は当時の様子をこう語っている。「救助のため電が接近してきて、甲板中央付近に収容されようとしたがそこにマルチ機銃を
    持った乗員がいて、機銃掃射を受けるのではないかと背筋がぞーっとした。」またピーター・アンソン卿は救助され、喜びのあまり艦上で騒いでいた。
    すると電側から「静かにしろ！」と怒鳴られたという。救助されたとはいえ、自分達はこれからどういう処遇を受けるのか。どういう運命が
    待っているのか。不安で仕方が無かった。エクセター乗員の話によると、駆逐艦曙の砲撃が一番命中していたとの事。
• 乗員の脱出が終わった13時30分、電から魚雷2本が放たれ、エクセターは撃沈された。エクセターが沈没する時、電では「沈みゆく敵艦に敬礼」という
  号令がなされた。同時に「降伏を勧める」という信号を送っている。13時43分、足柄から「救助活動を切り上げてバンジェルマシン経由でケンダリーに
  向かうべし」と命じられたが、17時まで救助を続けて379名を収容。バンジェルマシンへと向かった。士官は前甲板に、水兵は後甲板に収容。彼らには
  乾パンとミルクが支給された。反乱に備え、艦内各所には実弾の入った銃剣を持って番兵が見張りをしていた。電と司令部は盛んに通信を行い、その
  一部始終を雷電信室でも傍受。このやり取りが、雷艦長工藤中佐に影響を与えた。その後、エクセターとエンカウンターの艦長は、内火艇によって
  足柄に移乗した。
• 3月2日朝、バンジェルマシン泊地に到着。この泊地にはオランダ病院船オプテンノートが入港しており、各方面で捕虜にした連合軍将兵を一手に
  引き受けていた。電からも捕虜が降ろされ、オプテンノートに移乗した。捕虜は総勢900名以上だったという。あけぼの丸から燃料と食糧の補給を受け、
  戦備を整える。その日の夜遅くに雷や曙と出発し、敵駆逐艦ポープが撃沈された地点へと急行。翌3日22時50分、ポープの生存者151名を救助した。
  3月5日23時、足柄や雷とともにマカッサル入港。翌6日午前2時に出発し、3月7日午前9時にケンダリーへ到着。同日中に慶應丸を護衛して出港。
  3月12日午前8時30分、フィリピンのズービック湾に入航。現地で僚艦と合流し、第六駆逐隊が揃い踏みした。
• 3月13日から第六駆逐隊はフィリピン西方海域で活動。攻略作戦の支援を実施する。アメリカ軍はこの海域に多数の機雷と潜水艦を忍ばせており、
  気の抜けない場面が続く。単縦陣で行動中、敵の潜水艦を発見し、雷が撃沈する一幕もあった。東南アジアの連合軍を粗方一掃したため、第六駆逐隊は
  第一艦隊に転属。内地帰還を命じられた。ジャワ方面から北上する輸送船団と合流し、彼らを護衛しながら馬公に入港。そして3月26日16時に呉へ戻った。
• 4月18日、ドゥーリットル空襲が発生。連合艦隊司令部より「直ちに出港し、敵空母を撃沈せよ」という至急電が届き、乗員は休暇を返上。翌19日、
  第六駆逐隊緊急出撃。小笠原方面に急行するが、既に敵は逃げ去った後だった。4月21日から5月16日にかけて三菱重工横浜船渠に入渠。5月20日、電は
  アリューシャン作戦の戦力に組み込まれる。
  • 東南アジアとインド洋から連合軍を駆逐した帝國陸海軍は、第二段作戦の準備を始めた。その標的の一つとして選ばれたのが
    アリューシャン列島である。1942年2月の図面演習にて、アリューシャン方面から飛び立った新型爆撃機が帝都を奇襲する危険性が
    露わとなった。これを受けてアッツ島及びキスカ島の攻撃破壊が立案された。

• 5月22日、横須賀を出港し大湊へ回航される。電と雷は阿武隈に率いられ、アッツ島の攻略作戦を実施。6月6日、攻略部隊がアッツ島に上陸。
  アメリカ軍は存在せず、無血占領と相成った。こうしてアッツ島とキスカ島は、日本の手に落ちた唯一のアメリカ本土となった。本来、アッツ島も
  キスカ島も恒久的な占領を考えていなかったが、本命のミッドウェー作戦が失敗した事により、急遽占領が決定。6月13日、電は令達文書を各部隊に
  配布し、所在の秘匿に注力した。6月25日、大湊を出港しキスカ島へ弾薬を緊急輸送した。
• 6月28日よりキスカ島方面で対潜掃討に従事。アリューシャン方面には敵潜が跋扈しており、気が抜けない時間が続いた。7月2日にアガッツ島へ寄港。
  3日後、アガッツ島沖で敵潜に雷撃されて沈没した駆逐艦子日の乗員36名を救助。7月15日、キスカ湾で敵潜水艦グラウラーに襲撃され大破した不知火を
  雷と交互に曳航(駆逐艦霞という説も)。まず雷が幌筵まで曳航し、そこから大湊まで約1200kmを電が曳航した。7月31日、呉まで回航。
  9月から新生第二航空戦隊との訓練に従事する。

• 10月4日、第二航空戦隊の直衛に選ばれ、佐伯湾を出港。同月9日に前線基地のトラック諸島に到着し、ソロモン戦線に投入される。10月9日午前10時45分、
  給油船日本丸に横付けされ燃料補給を受ける。10月11日、トラックを出撃。ガダルカナル島攻撃のため行動していたところ、ソロモン諸島東方にて
  発電機の火災で反転してきた飛鷹と合流。駆逐艦磯波とともに護衛し、トラック島まで送り届けた。翌12日午後1時5分、電は五十鈴、高波とともに
  日本丸から燃料補給を受ける。
• 10月25日午前8時30分、第六駆逐隊(響欠)は30ノットの速力で敵ルンガ泊地に突撃。陸軍の総攻撃に呼応して泊地内を暴れまわった。15分間の戦闘で、
  特設巡洋艦1隻と輸送船3隻を撃沈。更に飛行場へ砲撃を加えた。迅速な行動により、アメリカ軍は反撃すら出来なかった。いよいよ日本軍の本格的な
  奪還作戦が始まったと思い、アメリカ軍は予想通りガ島周辺へと機動部隊を展開させた。
• 11月1日午後9時30分、ショートランドを出港し鼠輸送。翌2日、ガダルカナル島タサファロンガに物資を揚陸する。11月8日、電は挺身攻撃隊に所属。
  ヘンダーソン飛行場攻撃に向かう比叡と霧島の護衛を命じられる。

• 11月9日午後3時43分、トラックを出撃。戦艦2隻を護衛してガダルカナル島へ向かう。そして11月12日夜の第三次ソロモン海戦に参加。この夜戦は
  日米ともに信じられないほど接近し、双方激しい殴り合いへと発展した。比叡隊はノーマン・スコット少将率いる艦隊と、霧島隊は
  ダニエル・J・キャラハン少将率いる艦隊と激突。霧島と雷、照月とともに敵重巡サンフランシスコを砲撃し撃破。キャラハン司令とヤング艦長を
  戦死に追いやった。海戦の結果、比叡は大破炎上し、飛行場砲撃は失敗。旗艦比叡から離脱するよう命じられ、霧島とともに北上。一度退却を
  強いられる。姉妹艦の雷は大破し、特?型の長男的存在の暁も武運拙く沈んだ。電だけは大した被害を受ける事無く生還した。
• 11月13日午後2時、金剛や榛名と合流し燃料補給を受ける。そして霧島を中心とした殴り込み部隊を再編成し、多数の敵が待ち構える
  飛行場へと向かう。
  　
• 11月14日の第三次ソロモン海戦第二夜では、長良に率いられて参戦。サボ島西方から鉄底海峡へ進入した。18時40分、戦闘準備を完了させる。
  そして20時49分、敵艦影を発見。待ち伏せていたアメリカ艦隊との戦闘が始まる。電は敵艦隊の後尾につき、触接。逐一敵の動きを通報した。
  21時、敵戦力を駆逐艦4隻、巡洋艦2隻と報告。30分後、長良率いる別働隊は敵艦隊の右舷側に出現。砲撃及び魚雷戦を開始。サウスダコダと
  ワシントンは突然の砲撃に混乱し、サボ島の陸上砲台からの攻撃と勘違い。副砲を島に撃ちかけている。敵の混乱を的確に突き、必殺の酸素魚雷を発射。
  21時57分、放った魚雷が命中し「我、敵大巡魚雷命中轟沈」と戦闘詳報に書いている。間を置かず22時にも敵艦1隻に魚雷が命中、轟沈と判断された。
  この雷撃で、敵戦艦の護衛である駆逐艦ベンハム、ウォーク、プレストンを協同撃沈。グウィンに損害を与え、敵戦艦を丸裸にした。
• 22時52分、右20度に敵戦艦らしきものを確認。最大戦速に上げ、再び魚雷戦の準備を行う。全艦が必殺の魚雷を発射。17本の魚雷がワシントンに
  伸びていったが、信管が過敏に設定されていたため届く前に全て自爆。敵の新鋭戦艦を撃沈したと判断した長良隊は離脱を始める。
• 翌15日午前0時17分、敵戦艦に対し5本の魚雷を放っているが効果不明。この海戦で電は大巡1隻を魚雷で撃沈、砲撃により大巡1隻中破と戦果に記した。
  ところが結局霧島は沈没し、またもや飛行場砲撃に失敗してしまった。電自体には故障・被害ともに無く、戦闘能力に影響は無かった。
  11月18日午前8時、何とかトラック島へ帰投。だが電に休む暇は与えられなかった。

• 11月23日午後9時、ラバウルを出港。駆逐艦春雨とともにラエ・サラモアへの輸送任務に就いた。ところが翌24日18時53分に空襲を受け、反転離脱。
  12月1日午前0時、ラバウルを出撃し第二次パサブア輸送に従事するが、またもや空襲に遭い、至近弾で損傷。それでも輸送任務を続行し、翌日の
  午前1時10分に物資を揚陸した。
• 12月11日、次は第三次ブナ輸送に参加する事になった。駆逐艦風雲、磯波、夕雲、荒潮とともに陸兵約800名と物資を載せてラバウルを出撃。敵機の
  襲撃を避けるためアドミラルティ方面を北上し、いったん迂回航路を取る。その後、南下してブナへ向かった。道中で敵大型機10機の襲撃を受けたが、
  上空にいた零戦が追い払ってくれた。14日夜半、いよいよブナに入ろうとした時だった。ブナへ入るには細い水路1本しかなく、不運な事に
  オーストラリア軍が陣取っていた。突入は不可能とし、揚陸地点を変更。ブナから北西へ約80km離れたマンバレ河口へ移動し、陸兵及び物資を揚陸。
  これは成功した。
  • しかし陸兵たちは大発に乗っても陸岸へ行こうとしない。急な上陸地点変更に不満や混乱があるらしい。何やら指揮官の大佐が
    乗っている大発に集まっている。敵機がいつ襲ってくるか分からない状況でモタモタしている陸軍を見て、痺れを切らした僚艦の
    風雲艦長が「動ける者から、ただちに陸岸へ行け！」と怒鳴ったとか。実際、敵はすぐそこまで来ていた。駆逐艦が錨を揚げ始めた頃、
    敵機が急降下してきた。夜明けまでまだ時間があったにも関わらず。このため慌てて脱出。無事にラバウルまで戻った。

• 12月16日午後6時、ラバウルを出港。シンガポールからやってきたマダン支隊を乗せた輸送船団を護衛する。マダン攻略部隊を輸送中の12月18日、
  空襲を受け護国丸が損傷。マダン到着後、部隊の揚陸を沖合いから支援していたが敵潜水艦アルバコアの襲撃で巡洋艦天龍が沈没している。上陸中に
  再度空襲を受けたため、全ての物資を揚陸できなかったものの無血上陸に成功。マダン市はそのまま占領された。帰り道、B-24と交戦して撃墜された
  零戦の搭乗員を救助している。
• 12月26日午後5時、ラバウルを出港。谷風とともにウィックハム防空基地建造のための資材や人員を輸送する。翌27日午後9時20分、ウィックハムに
  到着。歩兵第229連隊第1大隊兵員や資材を揚陸。そして12月28日にショートランドに帰投。年越しを現地で迎えた。
  　
  1943年
• 1943年1月2日午前11時、ショートランドを出港。ガダルカナル島にドラム缶輸送をしていたが、レンドヴァ島西方で米軍機約20機から空襲を受ける。
  至近弾で速力が出せなくなった涼風を護衛して反転。船団から分派した。2隻が欠けたものの輸送作戦自体は成功する。これを最後に、ソロモン方面での
  活動は終わった。内地への帰投を命じられた電は瑞鶴や陸奥、鈴谷とともにトラックを出港。彼らを大分県沖まで護衛したあと、呉へと向かう
  瑞鶴隊と別れ、陸奥ともども1月12日に横須賀へ入港した。工廠で13mm連装機銃を追加装備する。
• 1月30日、北方部隊に編入される。2月12日、帝洋丸から重油178トンの補給を受け、片岡湾を出発。特設水上機母艦君川丸を護衛し、アッツ島に水偵4機と
  観測機2機、那智搭載機1機を送り届けた。2月15日に柏原湾に帰投し、翌16日に帝洋丸から重油175トンの補給を受ける。2月18日、片岡湾に寄港。現地で
  帝洋丸から33トンの送油を受け、阿武隈とともに出港。輸送船栗田丸を護衛してキスカ島に向かった。3月7日、25トンの送油を受ける。
• 3月23日、雷や阿武隈とともに第21ロ船団を護衛。そこで待ち伏せしていた米重巡ソルトレークシティからなる優勢な敵艦隊と遭遇。
  アッツ島沖海戦が生起する。3月27日午前2時、船団の最後尾についていた電が後方から追尾してくる米艦隊を発見。司令部は輸送船団の護衛を電に任せ、
  戦力を抽出してこれを迎撃する。砲撃戦を経て、ソルトレークシティを中破。航行不能に追いやるが、敵の護衛に阻まれてトドメが刺せない。
  もたもたしているうちに復旧したソルトレークシティは護衛を率いて離脱。追い払う事には成功したが、那智と摩耶の弾薬を多く
  消費してしまったため輸送は中止。作戦は失敗に終わった。電は戦闘そのものに参加した訳ではないが、弱腰姿勢な第五艦隊司令部を非難している。

• 4月2日、幌筵を出港。この頃になると敵機の跳梁が激しくなり、輸送船ではなく駆逐艦が輸送任務を代行するようになった。駆逐艦薄雲とともに
  キスカ島への輸送作戦を始めるが、荒天に遭って作戦中止。今度は行き先をアッツ島に変えて再度出撃するが、霧による視界不良と哨戒機の接触を受けて
  作戦中止。北方海域での作戦も、これを最後に終結。4月16日に横須賀へ帰投する。

• 5月5日、横須賀を出港。船団をトラック島まで送り届けた。5月14日、トラックを出発する船団を護衛して横須賀に入港。その後、横須賀・トラック間で
  護衛任務に従事。7月21日、トラック島から出発する4821船団を護衛。ところが翌22日午後4時59分、カロリン諸島の北方で米潜水艦の襲撃に遭い、会昌丸が
  被雷沈没。慌てて対潜掃討を行っている。護衛任務はまだまだ続く。10月6日、サイパンからの船団を護衛して横須賀到着。入渠整備を受ける。
• 11月24日、玉砕寸前のマキン・タラワの両島を救うため、連合艦隊司令部から「第六駆逐隊はマキン島に急行し、島に乗り上げて陸上砲台となれ」という
  トンデモ命令が下される。いわゆる水上特攻である。だが、翌25日に両島の守備隊が玉砕したため命令は撤回された。
• 12月1日、横須賀から出発する3201船団の護衛任務に就く。12月3日23時52分、父島の北東約520kmにて日吉丸が米潜の雷撃を受け沈没する。もはや日本の
  近海も安全ではなくなってきた。電は日吉丸の生存者を救助し、残りの船舶は何とかトラック島に入港した。12月21日、聯合艦隊信令作第77号により
  照川丸救助のためトラック島を出撃。能代、浜風、響、天霧とともに明石を護衛して現場に急行した。しかし現場に到着できたのは能代だけで、
  照川丸も21日20時20分に力尽きて沈没してしまった。遅れて到着した電は照川丸の生存者を救助した。12月27日、トラックから本土に戻る空母龍鳳と飛鷹を
  護衛して出港。
  　
  1944年
• 1944年1月2日、横須賀に入港。護衛任務従事のため瀬戸内海に回航される。1月8日、駆逐艦響や薄雲とともに航空機を輸送する空母海鷹及び神鷹を
  護衛して出港。ところが神鷹が機関不調を訴え、急遽佐伯湾に仮泊。修理が必要と判断され、神鷹は脱落。呉へと引き返していった。1月12日、
  残った海鷹を護衛し、外洋に出る。
• 1月21日、シンガポール到着。現地で物資を降ろした後、代わりに天山26機を海鷹に搭載。薄雲が護衛から外れ、電と響が海鷹の護衛を引き継いだ。
  そして同月31日、シンガポールを出港。タラカンとパラオを経由し、2月11日にトラック島へ到着。海鷹が運んでいた天山を降ろし、輸送任務を
  完遂させた。しかし輸送した天山は、間もなく生起するトラック大空襲で軒並み破壊されてしまった。2月13日、トラック島を出発。サイパンに
  寄港したのち、19日に呉へ帰投した。2月21日、第六駆逐隊は呉に集結。新たな駆逐隊司令戸村清大佐が着任した。
• しかし休む間もなく次の輸送任務が待っていた。前回同様響を相棒に、空母千代田を護衛する事に。3月1日、特設運送船国洋丸を加えて横須賀を出港。
  サイパン、グアム、パラオに航空機を届ける。道中の3月18日、タウイタウイ沖で米潜ガンネルに追跡を受ける。しかし空母側が高速だったため距離を
  縮める事が出来ず、電と響から16発の爆雷攻撃を受けて撃退された。その後、再度千代田を捕捉するが振り切られている。バリクパパンで給油を行った後、
  ダバオへ回航。4月4日に出港し、本土に向かった。4月10日、長い輸送任務を終えて呉に入港。同月21日から入渠整備を受ける。この際に二番砲塔を撤去、
  代わりに25mm単装機銃と連装機銃をそれぞれ2基装備している。4月30日、出渠。
• 5月1日、呉を出港し門司に回航。響や空母大鷹とともにヒ61船団を護衛する事になる。5月9日、船団は無事にマニラへ入港。ここで船団は二手に分かれ、
  タウイタウイ泊地に停泊している小沢艦隊へ給油を行うヒ57船団の護衛を担当。5月11日、バリクパパンへ護送するべく出港。
  　
• 5月14日午前4時15分、ボルネオ東北端シブツ水道北口にて米潜水艦ボーンフィッシュの襲撃を受ける。ボーンフィッシュはタンカー3隻に狙いを定め、
  5本の魚雷を発射。それが流れ弾となり、魚雷2本を後部と中央部に喰らう。被雷の衝撃で艦は真っ二つに裂かれる。右舷へ45度傾いた後、わずか2分で沈没。
  常盤艦長以下169名が死亡し、125名が響に救助された。1944年6月10日、除籍。
  • タンカー狙いの雷撃だったため、ボーンフィッシュは「玄洋丸型タンカー撃沈」と報告し、それが戦果認定された。これが誤りだと気付いたのは
    戦後の事だった。ちなみにボーンフィッシュも戦争から生還する事が出来なかった。
    　
    合わせて三回もの衝突事故を起こした電。先代電(雷型駆逐艦)も1909年に錦龍丸と衝突し沈没。いかずち型護衛艦いなづま(三代目)も1960年に
    あけぼのと衝突。とにかく衝突に縁のある艦名である。免許持ってんのかコラ。四代目いなづまは今のところ無事故のようだ。

2023年01月10日 午後0時過ぎ 四代目 いなづま も、瀬戸内海の周防大島付近で浅瀬に衝突・・・。衝突スキル持ち？

末尾の番号が若いほど、古いログになります。

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