356mm四連装砲

ロイヤル・戦艦主砲

• 第二次ロンドン海軍軍縮条約を見越して14インチという口径が決まったが、上記の通り従来の14インチ砲と違い重量級の砲弾を使っている。
  721kgの砲弾は日本の(元を正せば同じイギリスのヴィッカース社製の)14インチ砲に使う675kgより重い事からその威力の程が知れる。
  ビスマルクの38cm連装砲は800kgの砲弾を使うが、砲撃戦では単純に一度の投射できる砲弾重量の合計は主砲の数が多いKGV級のほうが有利である。
  日本の南方作戦時に金剛がプリンス・オブ・ウェールズと砲撃戦出来る距離まで近付いていたがこの時双方が気付かず戦闘は起こらなかったが
  仮に戦闘になっていた場合、金剛の不利は間違いなかっただろう。
• KGV級はこの4連装砲を2基+連装砲1基で計10門の圧倒的な砲数を有していた (予定では4連装砲3基計12門だったのだが、重量軽減のため1基を連装砲に変更している)。
  フランスのダンケルク級戦艦も4連装砲だが、向こうが内部的には連装砲2基を連結させていた事に対し、こちらは内部的にも分離していない
  純然たる4連装砲として設計された (ダンケルクの設計は、内部的に連装砲の連結であるので信頼性があり、被弾した際も中央隔壁により被害が軽減され4門中2門の被害で済む可能性がある)。
  • 4連装砲の長所として、4連装砲2基計8門の主砲は、連装砲4基計8門よりも、重量面で有利で尚且つ弾薬庫などの弱点も減らすことが出来た。
    KGV級を例に挙げると、1，3番砲塔の4連装砲塔は1582トン、2番砲塔の連装砲は915トンである。短所は砲塔が敵の砲弾で被害を受けた際、4連装砲は4門全て被害を受けるが連装砲なら2門で済む。
    4連装は砲塔の横幅が広がり、それに伴いそれを乗せる船体も横幅が広がり速力を出しづらい形になりやすかった 。ただし船体の横幅が広がる事は安定性が増すので、大砲のプラットフォームとして考えれば一概に短所とは言い切れない)。
  • この主砲の欠点として、砲塔の故障が頻発した事があげられる。これは先に述べた第二次ロンドン海軍軍縮会議の排水量制限をクリアするため、特に重量がある主砲の軽量化を試みた結果、
    砲塔の高さを抑え過ぎて主砲の内部構造が複雑化した事が原因だとされている。またこれは主砲のせいではなく船体が原因だが、KGV級戦艦は船首部分は垂直に切り立っており、全く反りがない。
    これは凌波性の不足を招き北大西洋では1番、2番砲塔が波を被って場合によっては凍結し余計故障を招いた。また距離測定で主に使う艦橋の光学測距儀の性能が低いので、最大射程が約35kmであるのに実用的な射程は25km程度になっている。
    ただしこれは後に搭載した高性能な射撃用レーダーで補っている。
  • ちなみに主砲に付いている測距儀のほうが艦橋の測距儀より性能は高い。予備としては有用であり、安定性もあるのだが主砲に付いている測距儀の欠点は波を被ると使い物にならないのである。
    そして前述の通り船体と凌波性の不足のせいでかなり頼りにならない予備となっている。
  • デンマーク海峡海戦ではKGV級2番艦プリンス・オブ・ウェールズが、主機の故障と主砲の不具合と被弾による損害により、フッドを撃沈したドイツ戦艦ビスマルクを取り逃している。
    またビスマルクをロドニーと共に追い詰めたKGV1番艦キング・ジョージ5世は途中で主砲が故障により発砲不能になっており発射弾数はロドニーに負けている。
    3番艦デューク・オブ・ヨークも北海沖海戦にてシャルンホルストを砲撃中、故障に悩まされている。
    ただし、部品の質や整備員の練度が上がるにつれ、主砲の信頼性は向上し、KGV級後期の4番艦アンソン、5番艦ハウなどは初期不良に悩まされてた時期も初期艦に比べ短縮され、
    大戦中期以降は初期に比べれば良好な稼働率を誇ったことも事実である。ただし大戦後期に日本本土への艦砲射撃に来た際も主砲が10門中3門故障しているので、故障癖があったのは否めない。
• KGV級の評価からネタにされがちな4連装砲塔だが、アメリカではノースカロライナ級戦艦も初期では14インチ4連装砲を搭載予定であったし
  それ以上となると1916年頃に計画された排水量80000トンの“ティルマンの巨大戦艦”4案では16インチ6連装砲案などもあった。それだけ重量面のメリットが大きかったのである。