U-37

• ドイツ海軍が建造したIXA型Uボートの1隻。IX型はI型を改良したタイプで、U-37はIA型をベースにしている。サドルタンクの全長を延伸し、
  それに伴って船体も巨大化、より多くの魚雷と燃料を積載出来るようになって長距離航洋を可能にしている。同時にエンジンも強化。
  IXA型は8隻生産され、U-37は記念すべき一番艦となった。
  • 要目は排水量1032トン、全長76.6m、出力4400馬力、最大速力18.2ノット(水上)/7.7ノット(水中)、燃料搭載量154トン、安全潜航深度100m。
    武装は21インチ魚雷発射管6門(艦首4門、艦尾2門)、魚雷22本、45口径10.5cm単装砲1基、37mm単装機関砲1基、20mm単装機関砲1基。
    魚雷の代わりに機雷22〜66個を搭載する事もできる。
    　
• 1936年7月29日にAGヴェーザー社に発注され、ヤード番号942を与えられる。1937年3月15日にブレーメン造船所で起工。1938年5月14日に進水し、
  同年8月4日に竣工。最前線部隊である第6Uボート戦隊に編入され、ハインリッヒ・シューク大尉が初代艦長に着任した。1939年4月、
  ヴィルヘルムスハーフェンを出発。U-29、U-30、U-31、U-34とともにポルトガル・アゾレス諸島間で潜航訓練を実施した。1ヶ月の訓練を経て、
  ヴィルヘルムスハーフェンへ帰港した。
  　
• 開戦直前の1939年8月19日、ヴィルヘルムスハーフェンを出港。対英仏戦争を見越して北大西洋に身を潜めた。開戦時、ドイツ海軍は56隻のUボートを
  持っていて46隻が作戦行動可能の状態にあった。しかしこのうち24隻は小型で大西洋での活動に向かず、22隻のみが大西洋で活動可能だった。U-37は
  希少な22隻のうちの1隻に含まれていた。
• 9月3日に第二次世界大戦が勃発するが、U-37は獲物と出会う事が出来ず、9月15日に帰港した。ヒトラー総統は英仏との和平を考えていたため、
  積極的な敵対行動は禁じられ、特にフランス船舶には自衛以外の攻撃は認められなかった。初陣は手ぶらで帰る事になってしまったが、こういった
  背景もあった。だが、ここからU-37の輝かしい戦歴が始まる。
• 10月5日、ヴィルヘルムスハーフェンを出港。狩り場の北大西洋に向かった。当時は戦時拿捕船規定というものがあり、これがUボートの足を引っ張った。
  中立国の船を見つけた時、まずは威嚇射撃を行って停船させ、臨検を行う必要があった。積荷から敵国への密輸品が見つかれば撃沈する事が出来るが、
  その際は乗組員の安全を確保する必要がある。だが狭い艦内のUボートにそんな余裕は無かった。敵船が停船命令を無視して逃走したり、反撃してきた場合は
  警告無しに撃沈出来るが、商船に有利なこの規定は足枷となった。このためレーダー提督からの要請で、ヒトラー総統は「停船させた敵船が無線機を
  使った時は撃沈しても良い」とUボートに指示した。またフランス船舶への攻撃も許可されている。
  • 10月8日午後12時30分、水平線から立ち昇る黒煙を発見。潜航して接近し、単独航行するギリシャ商船ヴィスチュラに威嚇射撃で停船を
    呼びかけた。貨物のリストを見たところ、密輸品を運んでいる事が判明。15時に14発の甲板砲を撃ち込んで撃沈。最初の戦果を得た。
    乗組員は2隻の救命ボートに分乗し、U-37から食料品を与えられてジェットランド諸島に向かった。
  • 10月12日16時38分、単独航行中のギリシャ船アリスを発見。前路を遮って停船を呼びかける。しかしアリスはイギリス向けの資材を
    運んでいたため、停船しないどころか無線を使って救援を求めた。甲板砲で威嚇射撃したが、それでも停船しなかった。18時20分、U-37は
    アリスの漏斗を砲撃して破壊。驚いた乗員は救命ボートで脱出し、19時45分に雷撃で仕留めた。
  • 10月15日午前7時29分、フランス商船バーモントを発見。バーモンド側もU-37を確認し、逃走を図った。午前8時18分、進行先を射撃して
    停船させようとしたが、敵船は止まらない。午前8時25分、2発目を船体に撃ち込んだ。するとバーモンドは観念し、フランス国旗を掲げて停船。
    U-37に貨物のリストを提出した。検査の結果、バーモンドは禁輸品を運んでいたため撃沈処分する事に。午前9時37分、工作隊を派遣。爆破して
    沈めようとしたが失敗し、結局魚雷で始末している。
  • 10月17日15時30分、ジブラルタル発リヴァプール行きのHG3船団(25隻)を僚艦U-46、U-48とともに襲撃。16時31分、フィニステレ岬西北西で
    イギリス商船ヨークシャーを2本の船尾魚雷で撃沈。しかし日没後に敵護衛艦艇から爆雷攻撃を受け、攻撃の機会を逸した。ちなみに
    U-46とU-48もそれぞれ1隻ずつ仕留めており、計3隻を撃沈している。
  • 10月23日22時16分、イギリス商船メニンリッジを発見して潜航。翌24日午前1時16分に雷撃を行ったが、命中せず。追跡を続行し、
    午前6時16分、ジブラルタルの西方で魚雷1本を発射して左舷船橋下に命中。メニンリッジは漂流、翌25日午前1時16分に沈没した。
    生存者は近くを通りがかったレッドベリーに救出されたが、午前8時にU-37に捕捉される。停船させたかったが、レッドベリーは
    救援を求めようと無線を発したため甲板砲で砲撃。34発を撃ったところで沈没した。その無線を受信したイギリス商船タフナが
    現場に現れ、午前10時30分にU-37もタフナを視認。午前11時19分に魚雷を発射し、右舷中央部に命中。15分以内に沈没させた。
    • 悠々と引き上げたU-37であったが午前11時47分、ジブラルタル西南西で敵機の攻撃を受ける。U-37は潜航、敵機から次々に爆雷が投下されたが、
      いずれも深度が誤っていて遥か頭上で早爆。80mの深さで攻撃を凌ぐ事とし、その間に乗組員は横になって休憩した。その後、ジブラルタルから
      駆逐艦ケッペル、ヴィデット、ウォッチマンが急派され対潜掃討を行った。16時45分、ケッペルの投下した爆雷がU-37の付近で炸裂。
      18時20分にはウォッチマンも加わり、U-37の船体は揺さぶられる。損傷により炭酸ガスが充満し始め、一晩中沈降している事が
      出来なくなってしまう。追い詰められたU-37は覚悟を決め、21時45分に浮上。いざという時は自沈も考えていたが、海面に出てみると
      敵艦はいなくなっていた。ひとまず命だけは助かったU-37だった。
  • 10月30日午前11時15分、ギリシャ船スラシヴロスを発見。15分後、U-37から信号を受けて停船させられた。乗組員は積み荷のリストを
    提出し、その中に禁輸品が含まれていたため撃沈を決定。乗組員が脱出したのを見届けてから、午後12時12分に魚雷で沈められた。
• 8隻の敵船をやっつけたU-37は11月8日、悠々と帰港した。11月11日から入渠し、整備を受けた。
  　
• 1940年1月1日、U-37は第2Uボート戦隊に転属。1月23日に出渠し、28日にヴィルヘルムスハーフェンを出発したが、ビーコンフレームに異常が
  認められたためヘリゴラントに寄港して修理。同日中に出港し、再び獲物が溢れる北大西洋で狩りを行った。今回の狩りではドイツ軍のスパイである
  Ernst・WeberDrohlをアイルランドに上陸させる任務も付随していた。
  • 最初の生贄となったのは、ノルウェー船ホップだった。2月4日午前2時25分、単独航行中のホップを発見。前路を遮るように回り込み、
    午前4時17分にジェットランド諸島沖で雷撃して撃沈した。同日20時30分、ジェットランド諸島ブレセイの東方でイギリス商船レオ・ドーソンを
    発見。国籍を明確にしていなかったため、21時11分にU-37から雷撃を受ける。これは命中しなかったが、12分後に放たれた2本目の魚雷が命中。
    積み荷の鉄鉱石もろとも沈んだ。敵は雷撃された事に気付いてすらいなかったという。2月8日、アイルランドの海岸に便乗のスパイを送り込んだ。
  • 2月10日19時、アイルランドのケープクリアの西方で光源を発見。追跡してみるとノルウェー商船シリヤが航行していた。20時59分、シリヤに
    1本の魚雷を命中させる。シリヤは船体を真っ二つにしてあっけなく沈んでいった。積み荷の塩は海へと還っていった。
  • 2月11日午前3時30分、ミルフォードヘブンの南西でイギリスの武装漁船トギモから漏れる光を発見。威嚇射撃をして停船を呼びかけた。
    しかしトギモは明かりを消して逃げようとしたため、午前4時58分に甲板砲で砲撃。26発の砲弾を受けてトギモは沈没した。すなどられた15トンの
    魚は海へ解放された。
  • 2月15日午前5時16分、デンマーク商船オーゼを発見。午前5時45分に雷撃し、船尾に直撃させて船体を二つに叩き割って撃沈した。
  • 2月17日午前10時16分、OG18船団を発見して単独で追跡。当初は水上航行で追いかけていたが、15時44分に船団が急に向きを変えたため、
    潜航しなければならなくなった。15時53分、イギリス商船ピュロスの右舷側から雷撃し、フィニステレ岬北西で漂流させた。
    ピュロスは放棄され、2日間漂流したのち二つに裂けて沈没。主な積み荷はワインやゴルフクラブといった一般貨物だった。
    この日、ドイツ海軍の通信傍受部隊がポルトガル沖をKS65船団が航行中であると伝えてきた。パリのUボート戦隊司令部はU-37、U-26、U-53に
    捜索を命じた。しかしU-26は燃料不足だったため、2隻で追跡する事に。
  • 2月18日午前0時、U-37は貨物船から漏れ出る光を確認して追跡を開始。45分後、ギリシャ商船エリンをヴィラーノ岬北西で雷撃。左舷船首に
    命中させたが、さほど効果は無かった。そこで午前1時9分に2本目を発射し、船体を引き裂いて撃沈した。同日午前7時40分、KS65船団を発見。
    3分後に急速潜航して狩りを始めた。午前8時23分にビジャノ岬沖でフランス船P.L.M.を雷撃。僅か40秒で葬った。沈没していく様子をU-37は
    遠巻きに観察していた。U-53も加勢に現れたが魚雷が早爆した挙句、護衛艦艇に追い払われている。
• 再び8隻の敵商船をやっつけたU-37は、2月27日にヴィルヘルムスハーフェンに帰投。敵が護衛に無関心だったため単独航行が多く、赫々たる戦果を挙げた。

• 3月30日、U-37は母港を出発。翌31日より仮装巡洋艦アトランティスの護衛についた。4月初旬にノルウェー侵攻作戦「ヴェーゼル演習作戦」が
  控えていたが、アトランティス護衛の名目でU-37は作戦から除かれていた。4月6日まで伴走した後、大西洋方面に進出。4度目の狩りに赴いた。
  • 4月9日21時35分、国籍を明示していない謎の船舶を発見。23時59分に雷撃を行ったが命中せず。10分後に二度目の雷撃を行ったものの、
    これも命中しなかった。翌10日午前1時36分、三度目の雷撃を実施。フェロー諸島沖でスウェーデン船スヴェアボルグの船首に命中させたが、
    敵船は沈まなかった。午前2時15分に2本目を撃ち、積み荷の石油ガスや燃料に引火して火だるまになった。炎上中のスヴェアボルグを見た
    ノルウェー船トスカが救助活動をしようとしたが、午前3時23分にU-37から雷撃を受けて沈没。午前6時30分、U-37は炎上中のスヴァボルグを
    確認し、撃沈を確信した。
  • 4月12日午前8時44分、汽船の煙を発見し潜航。午前9時42分、ジェットランド諸島マックルフラガ北方でイギリス商船スタンクリフを雷撃。
    敵船は8分以内に沈没した。尋問すべく生存者を捜索したが、誰も見つからなかった。
• いまいち戦果が挙がらなかったU-37はベルゲンへ向けて帰路についた。4月15日にベルゲンへと入港し、U-57に食糧、魚雷、弾薬を提供。翌16日に
  出発して4月18日にヴィルヘルムスハーフェン到着。今回は3隻撃沈に留まった。

• 5月15日、母港を出発。ポルトガルとスペインの近海を狩り場に定めた。そしてこの航海は大変実りのあるものとなった。
  • 5月19日午前5時40分、北アイルンラドのロンドンデリー北方でスウェーデン船エリック・フリゼールを発見。午前6時31分に雷撃して
    炎上させる。敵船はしぶとく浮かび続けていたため、船首の前を横切りつつ威嚇射撃。乗組員が救命ボートで脱出したのを見届け、
    砲撃で撃沈した。積み荷は飼料だった。
  • 5月22日21時30分、アイルランド南方で汽船の煙を発見。相手は護衛無しのイギリス商船ダンスタークランジであった。排水量9494トンと
    大型だったので、22時に4本の魚雷を発射している。しかし1本は船腹の下を通過、1本は早爆、残り2本はダンスタークランジに回避され、
    命中させる事が出来なかった。U-37は浮上し、甲板砲で射撃。命中弾を与えたものの、ダンスタークランジも反撃してきたためU-37は
    諦めて退却した。
  • 5月24日午前1時37分、ケープクリアの南方でイギリスの港に向かっていたギリシャ船キマを発見。午前2時48分、雷撃して撃沈。
    乗組員は救命ボートに乗って脱出した。積み荷のトウモロコシ6000トンとトラック90台は大西洋が召し上がった。
  • 5月27日午後12時52分、フィニステレ岬沖でイギリス商船シーフミードを発見。15時51分、雷撃し船尾に命中させる。15時54分に
    ボイラーが爆発、2名の乗組員が宙を舞ったのち転覆した。尋問のため生存者を探したが、見つけられなかった。同日20時、ヴィラーノ岬の
    西でアルゼンチン商船ウルグアイを発見。21時12分に雷撃するが回避される。U-37は前路に浮上し、威嚇射撃をして停船させた。
    ウルグアイの船長は貨物のリストを提出したが、内容に不規則性があった。詳しく調べてみると怪しい書類が出てきた。ウルグアイは
    アイルランドからアントワープに向かう途上だったが、ベルギー軍宛ての機密情報が記されていたのだ*3。利敵行為を疑ったU-37は規則に従って
    撃沈する事とし、20分で船から離れるよう乗組員に宣告。21時48分に爆破処分にした。
  • 5月28日午前4時、U-37は2本煙突を確認して追跡を開始。敵はXF60船団だった。船団は12ノットでジグザグに航行していたが、U-37には
    通用しなかった。午前9時24分、フランス商船ブラザをフィニステレ岬西方で雷撃。右舷側に直撃し、続けざまに2本目も命中。ブラザは
    右舷へ10度傾いた。1万トン級の船体ゆえ中々しぶとく浮き続けていたが、やがて船尾を下にして垂直に沈んでいった。ブラザには乗客444名が
    乗っており、多くの生存者が波間に漂っていた。敵の護衛艦艇がU-37を捜索したものの、潜望鏡や雷跡が確認できなかったため生存者救助に
    注力した。同日16時30分、フランス帆船ジュリアンを発見。威嚇射撃を加えて乗組員を退避させたのち、砲撃で撃沈した。
  • 5月29日午前6時15分、フランス船マリーホセをヴィゴ港の北西で威嚇射撃。停船を呼びかけたが、逃走を図りつつ緊急電を打ったため、
    甲板砲25発を撃ち込んで炎上させた。乗組員が船から脱出したのを確認し、午前6時57分にトドメの魚雷を放って撃沈した。それから間もない
    午前7時14分、フィニステレ岬ムロス沖でイギリス商船テレナに3回の威嚇射撃を加えた。しかし敵は無線機を使用したため、甲板砲を船体に撃ち込む。
    すぐさま積荷に引火し、沈没を避けるためテレナは浅瀬に座礁。船体は放棄された。のちにスペインが難破船を押収し、7400トンの石油を得ている。
  • 6月1日16時20分、HG32F船団を発見。潜航して追跡する。22時25分に雷撃をしたが不成功に終わる。23時4分、ケープタウンの西方で
    ギリシャ船イオアナに向けて3発の威嚇射撃を行って停船させる。乗員の脱出後、魚雷を撃ち込んで撃沈した。生存者を救助してみると、
    船長はギリシャの元潜水艦司令だった。積み荷のタマネギはU-37に押収され、食糧となった。
  • 6月2日23時31分、フィニステレ岬北西で国籍不明の船舶を発見。午前4時56分に射撃を加えたが、その船はフィンランド船籍のスナブだった。
    フィンランドはドイツ寄りの中立国であり、無線通信の傍受で国籍を知ったU-37は慌てて攻撃中止。しかし既にスナブは致命傷を負っていて、
    乗組員は脱出した後だった。やむなく銃撃で撃沈した。
• 6月9日、ヘリゴラントに帰投。同日中にヴィルヘルムスハーフェンへと回航された。10隻撃沈(4万1017トン)と上々の戦果だった。

• 8月1日、ヴィルヘルムスハーフェンを発って六度目の出撃。アイルランド西岸沖の大西洋で狩りを行う。だが今回は獲物に恵まれなかった。
  • 出撃した翌日、U-37とU-38は飛来したハドソン爆撃機に襲撃される。幸いどちらも被害は無かった。16時、今度はオランダの潜水艦O-22に
    襲われる。そして2隻に向かって2本の魚雷を放ったが、命中しなかった。しかもUボート側は気付いていなかったようだった。
  • 8月8日午前7時40分、イギリス商船アップウェイグランジを発見、追跡のすえ13時14分、アイルランドのゴールウェイ沖で左舷から雷撃。
    1本を命中させ、撃沈した。貨物の冷凍肉と缶詰肉5380トンが波間に消えた。
• U-37はパトロールを切り上げて港に向かったが、今回から帰港先がフランスになった。ドイツ軍がフランスを占領した事で、より大西洋に
  進出しやすいフランス沿岸がUボートの出撃拠点になっていたのだ。第2Uボート戦隊もヴィルヘルムスハーフェンからロリアンに本拠地を
  移していたため、ロリアンに向かった。8月12日、無事入港。

• 8月17日、ロリアンを出発。アイルランドの南西沖に進出した。この日、ヒトラー総統はイギリス近海の海上封鎖と、中立国船舶の攻撃権限を
  全Uボートに与えた。これで戦時拿捕規定に縛られる事無く、思う存分暴れる事が可能になった。
  • 8月22日20時、OA200船団からはぐれたイギリス商船ケレットを捕捉。翌23日午前2時22分、ゴールウェイ沖で魚雷1本を撃ち込み、
    8分以内に沈没させた。同日午前11時45分、船影を発見して狩りを開始する。午後12時50分、アイスランド南部で同じくOA200船団から落伍した
    イギリス商船セバーン・リーを雷撃して大破させる。乗組員は4隻の救命ボートで脱出したが、U-37の無線通信士がセバーン・リーから
    遭難信号が送られている事を突き止め、浮上して甲板砲で葬った。砲撃した際に生じた爆発で2隻の救命ボートが巻き込まれ、32名の乗員と
    砲員1名が死亡している。
  • 8月23日17時12分、水平線から伸びる煙を確認して追跡を開始。23時35分に潜航し、静かに忍び寄った。翌24日午前1時46分に2本の魚雷を
    放ったが命中せず。次に午前3時14分、アイスランド南部で再度2本の魚雷を発射。イギリス商船ブルックウッドに直撃させ、停止した。
    乗組員は脱出したが、ブルックウッドは沈む様子が無かったため接近して砲撃。ずたぼろにして漂流させ、のちに沈没へと追いやった。
  • 1隻やっつけたのも束の間、8月25日午前0時にSC1船団と遭遇。護衛のヘイスティングス級スループペンザンスが出現し、更に敵機まで
    加勢に現れた。空と海から同時に攻撃を受けるも、U-37は勇敢だった。同日20時38分、アイスランド南西でペンザンスを雷撃。船体を二つに
    引き裂いた。艦尾部分が沈没したため乗組員は海へと脱出したが、搭載していた爆雷が起爆して数名が死亡するという追い討ちを喰らっている。
    7名の生存者がイギリス商船ブレアモアに救われたが、この船もU-37に撃沈された。
  • 8月25日20時頃、U-37はOB201船団を追跡。2時間以上追跡したのち、南西方面が霧に覆われ始めた。逃げられてなるものかとU-37は
    発砲、イギリス商船ユークレスト付近に着弾した。ユークレストは武装していて、U-37に撃ち返してきたため短時間ながら動きを
    封じられてしまう。すぐに再起動を果たすと、今度はユークレストの正面から砲撃。命中弾を与えて炎上させ、停船させる事に成功。
    乗組員は次々に脱出し、翌26日午前3時7分に沈没した。
  • 8月27日20時18分、アイルランド南西でギリシャ船オドロス・Tを発見して追跡。21時12分に潜航し、攻撃の機会を窺う。そして22時31分、
    満を持して魚雷を発射し、命中させた。乗組員はエンジンを止めずに退避したためしばらく走り続けたが、やがて沈没した。
• 8月30日、ロリアンに帰港。今回も大漁だった。

• 9月24日、ロリアンを出港。北大西洋に向かった。
  • 9月27日22時59分、ゴールウェイ沖でエジプト船ジョージ・マブロを襲撃。魚雷1本が船橋下に直撃し、船体が二つに裂かれて30秒以内に
    沈没した。あまりにも早い沈没だったため生存者は皆無だった。
  • 9月28日19時40分、アイルランド西部で単独で漂流する謎の船舶を発見。近づいてみると廃船同然となったイギリス商船コリエンテスだった。
    どうやら僚艦U-32の雷撃で大破し、6時間に渡って漂流していたようだった。船員は既に脱出していて、何の抵抗も無かった。20時に魚雷を
    発射したが、それでも沈まなかった。21時40分、銃撃を以って安らかな眠りにつかせた。
  • 9月30日午前8時45分、イギリス船サマラをアイルランド西部で捕捉。午前10時13分、雷撃して炎上させる。しかし付近にはU-38が発見した
    敵の船団がおり、司令部から「船団攻撃優先のため沈没を待つな」との命令も出されたため、急いで踵を返した。それでもしっかり沈没するよう、
    喫水線に数発の砲弾を撃ち込んだ。その甲斐あってサマラは沈没した。同日17時20分、OB220船団を発見。さっそく雷撃したが失敗に終わる。
    21時56分に二度目の雷撃を敢行し、イギリス船ヘミンゲを撃沈した。
  • 10月6日18時55分、ヴェレンティア島西方でイギリス船ブリティッシュ・ジェネラルを雷撃。1本目を命中させたが、手ごたえは無かった。
    U-37は追跡を続け、23時10分に2本目の魚雷を発射。ようやく機関停止させる事に成功したが、一向に沈む気配が無い。
    ブリティッシュ・ジェネラルは武装しており、迂闊に近づく事が出来なかった。翌7日正午、敵船はモールス信号で周囲の艦に救援を求めたため
    U-37は逃走せざるを得なかった。何とか生き残ったブリティッシュ・ジェネラルだったが、結局20時に力尽きて沈没した。
  • 10月13日午前9時21分、イギリス商船スタングラントを発見。19時57分、ロッコール北東で後方から雷撃して撃沈。救命ボートの1隻を捕獲し、
    生存者を尋問している。
• 10月22日、ロリアンに帰港。

• 11月28日、ロリアンを出港。今回はアフリカ北西部とスペイン沿岸を狩り場にした。
  • 12月1日18時4分、獲物の汽船を確認。20時22分、ポルトガル沖でイギリス商船パルメラを雷撃。パルメラはそう簡単には沈まなかったが、
    無線装置が損傷して助けを求める事は出来なかった。乗組員が脱出した後、パルメラはパックリ割れて沈没した。
  • 12月2日午前3時、ポルトガルのロカ岬沖でOG46船団を襲撃。午前4時18分、スウェーデン船グワリアを襲撃して仕留める。
    続いて同船団のイギリス船ジャンヌ・Mを襲い、午前4時46分に撃沈。U-37はOG46船団の追跡を続けた。
  • 12月4日午前3時50分、リスボンの南西でOG46船団のイギリス船ダフネに狙いをつける。午前4時57分、エスピシェル岬沖で雷撃。大爆発が起き、
    3分以内に沈没させた。
  • 12月16日19時50分、フェルテベントゥラ島沖でスペイン船サン・カルロスを雷撃するも逃げられる。U-37は浮上し、距離800mまで
    接近して甲板砲でトドメを刺そうとした。20時から射撃を開始したが、21発撃ったところで故障してしまう。だがサン・カルロスには
    致命傷を与えたようで、2隻の救命ボートに分乗して逃げていった。甲板砲が使えないので工作班を送り、爆破して沈めた。
    この時、発射した20cm砲が木造船体を貫通できていない事が判明した。
  • 12月19日16時40分、モロッコのジュービ岬沖で誤ってヴィシーフランスの船ローヌと潜水艦スファックスを魚雷で撃沈してしまう。
    しかしこの事件に関する記録や声明は一切残っておらず、謎が残されている。
• 1941年1月14日、ロリアンに帰港した。
  　
• 1941年1月30日、U-37最後のパトロールに出撃。しかし潜望鏡に問題が発生したため同日中にロリアンに引き返し、修理を受けた。気を取り直して
  2月3日に再出発。狩り場をポルトガル沖に定めた。
  • 2月8日深夜、サンビセンテ岬沖で22隻の輸送船からなる巨大船団を発見。これはジブラルタルからリヴァプールに向かっているHG53船団だった。
    U-37は追跡を開始し、翌9日午前4時30分、セントヴィンセント岬の南西でHG53船団を襲撃。イギリス船クールラントとエストレラーノを
    同時に撃沈する戦果を挙げた。かつてない規模の敵船団を前に、U-37はボルドーのメリニャック空軍基地に応援を要請。第40航空爆撃団所属の
    Fw200コンドル5機が出撃し、U-37から送られるビーコン信号に導かれてHG53船団の上空に到達。5隻を撃沈する華々しい戦果を挙げた。
    Fw200が引き上げた後も追跡を続行、周辺の味方艦に向けて信号を発し続けた。
  • 2月10日午前6時33分、ジブラルタル西方で二度目の襲撃を行い、イギリス船ブランデンブルクを仕留めた。U-37の信号によって
    重巡洋艦アドミラル・ヒッパーが現場に到着。しかし、その頃には既に沈没を待つだけの敵船しか残っていなかったという。その敵船は
    アドミラル・ヒッパーにトドメを刺され、HG53船団は9隻を撃沈される結果となった。2月12日にリナウン率いる護衛艦隊が出撃したものの、
    既にドイツ側が撤退していて後の祭りだったため別の命令が下されている。HG53船団は潜水艦、航空機、水上艦全てに襲われた数少ない船団に
    なってしまった。
• 2月18日、ロリアンに帰港。

• 2月27日、最後の戦闘航海に出撃。
  • 3月7日午前8時時7分、煙を発見して前進。その先にはOB292船団から散開したギリシャ船メンターがいた。午前10時48分、雷撃を行って
    魚雷1本を命中させる。メンターはスクリューを回転させながら、船首から沈んでいった。
  • 3月12日16時、国籍を明示していない謎の漁船を発見して攻撃に移った。18時5分、アイスランド南方で砲撃して謎の船舶を撃沈したが、
    よく見ると船首にアイスランド国籍を示すマークが描かれており、沈めた相手はアイスランド船ペトゥルシーだった。しかしそのマークは
    錆び付いていて殆ど見えず、U-37側が把握できたのも仕留めて沈没していく時だった。乗組員は全員死亡した。
• この戦闘航海を最後にU-37は一線を退く事になり、3月21日にヘリゴラントに到着。ブルンスビュッテルで一晩仮泊して出港、3月22日に
  カイザーウィルヘルム運河を通過してキール港へ辿り着いた。シュチェチンの造船所に移動し、現役を引退した。お疲れさま。
  　
• 1941年5月1日、U-37は先月開隊したばかりの第26Uボート戦隊に編入。ピラウに回航された。第26Uボート戦隊は訓練艦隊であり、
  新たに就役した後輩Uボートに3〜4週間程度の教育を施した。1942年4月1日、ゴーテンハーフェンを拠点とする第22Uボート戦隊に転属。
  乗組員の卵に実習の場を提供し、苛烈な前線へと送り出していった。戦況が悪化してもなお乗組員志望者は後を絶たず、多くの人員を
  一人前に仕立て上げた。1944年7月1日に第4Uボート戦隊に転属し、搭載兵装の実験に従事。ちなみにこの隊では、U-37が最古の艦だった。
• 1945年5月4日15時14分、デーニッツ提督は全てのUボートに戦闘中止命令を出した。敵に艦を渡す事は戦闘員の名誉保持を規定した
  条項に違反するとして、多数の艦長が自沈を考えていた。そのため、いつしか「全艦艇自沈せよ」を意味する暗号『レーゲンボーゲン』が
  どこからともなく流れ始め、総計221隻が栄誉ある自沈を選んだ。そしてU-37も5月5日、デンマークのセンダーボルイ湾で自沈。
  北海やバルト海の各所から聞こえてくる爆発音に連なった。戦闘中止まで生き残っていたIXA型はU-37とU-38だけだった。
  　
• ちなみにU-37が現役を引退した頃に公開されたイギリスのプロパガンダ兼サバイバルホラー映画「49th Parallel(邦題:潜水艦轟沈す)」にて
  銀幕デビューした(当然本人ではないが)。カナダのセントローレンス湾でカナダ船舶を撃沈したU-37は、食糧と燃料確保のため6名の乗員を
  ハドソン湾から上陸させた。その直後、カナダ空軍のロッキードハドソンから爆撃を受けてU-37が撃沈される。残された6名の乗員は帰国のため、
  カナダを脱出して中立国(当時)のアメリカへ行き、ドイツ大使館に駆け込まなければならなくなった。しかし道中には襲撃や思わぬ事故が
  待ち構えており、逃避行の中で1人、また1人と斃れたり捕らえられたりしていく…というサバイバルホラーである。
• U-37の模型はハリファックスで建造され、ニューファンドランドに回航されたが、当時ニューファンドランドはイギリスの海外領土だったため
  輸入税未納が原因で税関に押収された一幕もあった。
• 1943年公開のアメリカのプロパガンダ映画「北大西洋での行動(Action in the North Atlantic)」にも登場。北大西洋で石油タンカーの
  ノーザンスターを撃沈し、脱出した乗組員が乗った救命ボートに近づく。その中に船長のスティーブ・ジャービス大尉がいて、U-37の
  乗組員に対して反抗的なジェスチャーを取ったため、体当たりされて救命ボートを沈められている。どうやらU-37が敵国に与えた影響は
  非常に大きかったようだ。

末尾の番号が若いほど、古いログになります。

'コメント/U-37/' には、下位層のページがありません。