Z2

Z23の姉のひとりが『レーベくん月次報告書』なるものを指揮官に提出していることが明かされる（意外と内容はまともらしい）。
指揮官をレーベくん推し仲間とみているのだろうか…？

• ドイツ海軍が保有したZ1型(1934年型)駆逐艦の二番艦。ゲオルグ・ティーレとも言う。1914年10月17日、イギリス軍との戦闘で
  魚雷艇S119を撃沈され戦死した司令官の名前から取られている。

• 1934年10月25日、キールのドイチェヴェルケで起工。K243の建造番号が振られた。1935年8月18日に進水し、
  1937年2月27日に竣工した。12月1日、第1駆逐艦部隊に配属される。
  • 諸元は排水量2619トン、全長119m、全幅11.3m、重油搭載量715トン。乗組員は315名に加え、士官10名。
  • 第一次世界大戦終結後、ドイツが最初に設計した駆逐艦。当時はヴェルサイユ条約が有効だったため、それに則った設計がされている。
    重量を軽くするため電気溶接を多用したのが特徴的。機関区は二重底にし、外側のスペースには燃料やボイラー水、飲料水が保管された。
    しかしこの設計は火災の危険を飛躍的に高めたという。ワーグナー製蒸気ボイラー6基を搭載し、出力は7万馬力を発揮。
    最大速力は38ノットだったが、設計の問題から36ノットに抑えられている。出力は高いものの、大変複雑な装置だったため故障率の高さに悩まされた。
    駆逐艦4隻に1隻の割合で不調になる程だったとか。主砲は復元性が優れないにも関わらず、大口径のものを装備。かなり危険なバランスとなっている。
  • 整備の難しさや振動など、数々の問題を抱えていたので僅か4隻のみの建造で打ち切り。以降は改良型の1934年A型へと移行していく。
    のちに姉妹艦は近代化改修を受けたが、Z2は短命だったため受けていない。

• 1938年4月、ノルウェーのナルヴィクを訪問。ところが浸水によって船体にダメージが入ったため、
  ドイチェヴェルケのドックに入渠し、修理。全長が30m長くなった。8月27日、ハンガリー王国との合同演習に参加。
  12月8日、グラーフ・ツェッペリンの進水記念式典に参列。続いてアイスランド方面に向かい、
  艦隊演習に参加するとともに極寒の海での耐久テストを行った。
• 1939年3月23日、選挙でドイツ系民族が勝利し、リトアニア領メーメルがドイツに返還される事になった。
  翌24日、ヒトラー総統を乗せてシュヴィーネミュンデを出発したドイッチュラントを護衛。
  記念式典が行われるメーメルへと送り届けた。その後、地中海西部で行われる春の艦隊演習に参加。その時に、
  スペイン内戦での勝利が決定的となったフランコ総統率いる国粋派の港へ寄港している。
• 8月27日早朝、政治的緊張の高まりからエーレスンドを通過する船舶の監視していると、ボーンホルム島近海で
  マックス・シュルツと魚雷艇タイガーが衝突事故を起こす。Z2は現場に駆けつけ、マックス・シュルツを曳航。
  どうにかシュヴィーネミュンデまで連れて帰った。
• 1939年9月3日、ドイツ軍のポーランド侵攻に端を発した第二次世界大戦が勃発。Z2は対ポーランド海軍及び海上封鎖の作戦に
  配されたが、すぐにドイツ近海へ戻され姉妹艦とともに西の壁作戦に従事。9月20日まで北海にて防御用機雷を敷設した。
  1939年末、Z2は入渠し改装工事を実施。翌1940年4月上旬に完了した。この時点でZ1とZ3は沈没しており、残っていたのはZ2とZ4だけだった。
• 戦列復帰して間もない1940年4月、ドイツ軍はノルウェー及びデンマークの攻略作戦ことヴェーゼル演習を発動する。
  • 元々ヒトラー総統はノルウェーに中立の立場を取らせ続ける予定で、侵攻など全く考えていなかった。中立国であれば、ノルウェーの領海は安全地帯となり、
    ドイツ貨物船は敵に襲われる心配が無くなるので充分である。ところがイギリスが不味い行動をした。1940年2月16日、ドイツの補給艦アルトマルクは
    ノルウェーの近海を航行していた。アドミラル・グラーフ・シュペーが捕らえた捕虜が乗せられていたが、これを救助するため
    イギリス軍が中立国の領海内にも関わらず襲撃し、戦闘行為をしたのである。ノルウェーは怒って抗議したが、それより激しい怒りを抱いたのはヒトラー総統だった。
    今後、このような事態が起こらないようノルウェー全体を保護国(という名の支配下)に置くべく、侵攻作戦を練り始めた。
• Z2には、ノルウェー北部の港町ナルヴィク*2に上陸させる第139山岳猟兵を輸送する任務が与えられ、パウル・ボンテ代将の指揮下に入る。
• 4月6日、鉄道で輸送された山岳猟兵を収容。駆逐隊全体で約1000名の山岳猟兵を積載した。
  同日夜、旗艦ヴィルヘルム・ハイドカンプに率いられ、ヴェーザーミュンデを出港。シャルンホルストやグナイゼナウを
  中核とした第1戦隊とともに暗く冷たい海へと出る。奇襲を行うべく、艦隊は悪天候に紛れた。しかし駆逐隊は既に運命の女神から
  見放されていた。すぐに空が晴れ渡ってしまい、さっそくイギリス軍のブレニム爆撃機35機が襲い掛かってきた。
  幸い被害は無かったものの、位置情報を通報され、カニンガム中将率いるイギリス艦隊がドイツ駆逐隊の位置を探り始めた。
• 夕刻になると運が持ち直したのか、再び天候が悪化。海は大時化になり、駆逐艦を揺らす。予定の時刻を守るため26ノットで走り続けた事で
  艦内は余計に揺さぶられた。おかげで海に慣れていない山岳猟兵たちは船酔いし、死んだように倒れていたとか。
  海上は嵐のようになり、隊形維持に支障が出始めた。波に叩かれて艦首の向きを狂わされたり、コースから外れる駆逐艦が続出。
  数時間後には散り散りとなってしまった。

• 4月7日早朝、明るくなるのを見計らってから駆逐艦は集結。再び隊形を組んで進軍を始めた。だがこの海域にもイギリス軍が出現し始めており、
  ベルリンの無線傍受部隊からも「イギリス本国艦隊が洋上に出ている」との報告があった。
• 4月8日、僚艦のハンス・リューデマンがイギリスの駆逐艦グローウォームと遭遇する一幕があり、駆逐隊の護衛として同行していたアドミラル・ヒッパーが
  迎撃に向かっている。暴風雨警報が出ているロフォーテン水域へ突入する駆逐隊。激しい風雨は、イギリス軍の目から駆逐隊を守った。
  同日夜、囮の役割を果たすためシャルンホルストとグナイゼナウが離脱。西方へと向かっていった。これで大型艦は全て離脱し、駆逐隊のみとなった。
  午後9時、ようやく海が静かになった。水兵と山岳猟兵は2日ぶりに温かいご飯にありつけた。

• 4月9日未明、駆逐艦8隻はナルヴィクへの入り口であるオフォトフィヨルドに到着し、複雑に入り組んだ入り江を突き進む。
  道中でノルウェーの警備艇が出てきたが、逆に降伏させている。そして遂に目的地のナルヴィクが見えてきた。
  激しい吹雪が吹きすさんでいたため、Z2は僚艦2隻とともに桟橋から山岳猟兵を上陸させる。
• 悪天候ながら作業自体は順調に進んでいた。しかし、そこへノルウェー海軍の海防戦艦ノルゲが襲来。降伏勧告に応じず、
  砲撃を仕掛けてきた。薄暗い上、雪による視界不良のおかげで近距離ながら命中しなかった。Z2は僚艦と協同で反撃し、
  魚雷でノルゲを撃沈した。同じく降伏に応じなかった海防戦艦エイスヴォルも撃沈される。こうしてドイツ軍にとって海上における脅威は消失した。
  4月9日午前8時、ナルヴィク守備隊は降伏。ノルウェー軍の指揮官が親独派だったため、占領はスムーズに進んだ。
• こうしてナルヴィクは占領され、Z2は任務を完遂。あとは本国へ帰還するための燃料を運んでくるタンカー2隻の来訪を待つのみだったが……。
  ところが実際に到着したのはタンカー1隻のみで、しかも給油能力が低い捕鯨母船であった。このため帰国が遅れてしまう。
  ボンテ代将は出発を4月10日夜に定め、僅かながら燃料に余裕があったZ2とZ11をバランゲンフィヨルドに停泊させた。
  この事が、明暗を分けた。ノルウェー西部には、イギリスの本国艦隊が集結していたのだ。
  • ノルウェー南部はドイツ空軍が制空権を握っていたため、その勢力圏外である北部に進出してくる敵軍を狙うべく、イギリスはナルヴィクを監視していた。
    しかし入ってくる情報は乏しく、4月9日に輸送船1隻が進入して上陸作戦を始めた事しか分からなかった。
    これを受けてフォーブス司令はリー大佐にナルヴィクのドイツ艦船攻撃を命じた。4月9日午後5時51分、リー大佐は「明日未明の満潮に攻撃する」と上官に報告。
    物量作戦に出る事を決めた。しかしリー大佐はドイツ駆逐隊の戦力を過小評価しており、のちに手痛いしっぺ返しを喰らう羽目になる。
    潤沢なイギリス軍を相手に奮闘
• 4月10日未明、ナルヴィクのドイツ艦艇攻撃の任を帯びたイギリス駆逐艦5隻がオフォトフィヨルドに侵入。ドイツ側は警備のため湾口にZ17を配置していたが
  イギリスの駆逐艦らはドイツ艦艇に偽装していたため、欺かれてしまった。午前4時30分、ナルヴィク停泊中のドイツ駆逐隊に奇襲攻撃を仕掛け、第一次ナルヴィク海戦が生起する。
  英国からの来訪者は一斉に魚雷を放ち、旗艦ヴィルヘルム・ハイドカンプとアントン・シュミットを撃沈。ボンテ代将が戦死。
  タンカー到着が遅れ、各々が燃料不足だったドイツ駆逐隊は窮地に立たされ、駆逐艦3隻大破、1隻中破、1隻小破の大損害を負う。
  偶然、Z2は主戦場から離れて停泊していたため、この攻撃の被害に遭う事は無かった。そして戦闘音を聞きつけ、僚艦とともに急行。
  奇襲を成功させたイギリス駆逐隊は黒煙による視界不良のため一時撤収。視界が晴れるのを待ってから再突入してきた。
• 劣勢の中、Z2が意地を見せた。接近するZ2とZ11を味方艦と誤認した相手方の判断に助けられ、肉薄。午前5時57分、駆逐艦ハーディを砲撃し、
  大破炎上。砲弾を浴び、リー大佐が戦死する。沈没を防ぐため、ハーディは自ら座礁した。次にホットスパーを雷撃し、魚雷1本を命中させて大破。
  僚艦も奮戦し、駆逐艦ハンターを撃沈。思わぬ反撃を受けたイギリス駆逐隊は退却していき、1回目の海戦は痛み分けに終わった。
  しかしZ2自身も反撃に遭い、7発被弾。ひどく損傷していた。前部主砲と消火装備を喪失し、乗組員13名が死亡した。
  海戦終了後、Z2は修理を受けた。だが先ほどの海戦で補給物資を積んでいた船ラウェンフェルスが沈められており、物資欠乏を窮めた。
  • 海戦終結後の4月10日正午頃、戦死したボンテ代将の後を継いだエーリッヒ・バイ中佐は駆逐艦長をZ7に参集させた。
    このまま現地に留まるのは得策ではないとし、作戦行動が可能なZ9とZ12は先立ってナルヴィクから脱出する事になった。
    ところが湾口はイギリス軍の艦艇が封鎖しており、突破は不可能として引き返さざるを得なかった。
    修理が進み、戦列に復帰した駆逐艦は増えたものの突破は困難であった。このため4月12日朝、バイ中佐は突破を断念。
    弾薬が尽き果て全滅するまで防衛戦を行う方針に転換した。
• 優勢下にあって撃退されたイギリス軍は汚名を濯ぐべく、潤沢な物量に物を言わせ大軍を投じてきた。ここにドイツ駆逐隊の運命は窮まった。
  4月12日、総攻撃に先立ってアーク・ロイヤル艦載機がナルヴィクを空襲。鹵獲したノルウェー軍の船舶3隻を撃沈されたが、
  駆逐艦に損害は出なかった。だが、そのアーク・ロイヤルの背後には悲運が待ち受けていた…。

• 4月13日、かのウォースパイトに率いられた駆逐艦9隻が再びナルヴィクに強襲をかけ、午後12時34分に第二次ナルヴィク海戦が生起。その様はまるで猟犬の群れに導かれる狩人のようであったという。
  燃料に加え、弾薬まで不足していたドイツ駆逐隊に最早戦う力は無かった。対するイギリス軍はウォースパイトの砲撃支援やフューリアスの航空支援を受けており
  物資的にも戦力的にも優勢な立場にあった。生き残っていたドイツ駆逐艦は港外へ迎撃に向かうが、Z2とZ12は準備が遅れ、港内に残留。午後1時の出港を目指した。
  先に準備を完了したZ12が出撃していったが、待ち構えていた狩人ウォースパイトの激しい砲撃を受け、撃沈される。
  残っていた他のドイツ駆逐艦も最期まで戦ったもののイギリス軍により次々と自沈に追い込まれ、午後2時頃にはイギリス側の一方的な勝利が確定してしまう。
  そのワンサイドゲームっぷりは「ドイツ駆逐艦の処刑場」とまで言われたほど。

• だが、Z2はまだ生き残っていた。最東端の港内に留まっていたため、苛烈な戦火から逃れられたのである。しかしイギリス軍の手は緩まない。
  エスキモーを先頭にした5隻の艦船、「猟犬たち」が東進してくる。武装は4基の機銃と6本の魚雷しか持っていない。
  まるで勝ち目の無い戦だが、Z2は最期まで諦めなかった。ともに残っていたハンス・リューデマンとともに最後の抵抗を試みた。隠し持っていた最後の切り札を手に―――。
• 午後2時45分、敵艦隊の前に躍り出ると、ハンス・リューデマンとともに魚雷を一斉に発射。討たれた仲間の無念を晴らすが如く、
  魚雷はエスキモーの艦首に直撃、大破へと追いやることに成功する。艦首を亡失したエスキモーは戦闘不能になり落伍した。
  僚艦のハンス・リューデマンが弾薬を使い果たし、離脱。イギリス軍は追いすがろうとしたが、Z2がこれを妨害。そのおかげでハンス・リューデマンは退避し、
  Z9やZ11と合流する事が出来た。敵中に孤立したZ2は、その代償に敵の集中砲火を受ける。激しい砲火に遭い、散発的な一斉射で反撃するのが精一杯だった。
  乗組員14名が死亡し、28名が負傷した。午後3時までに全ての弾薬を使い果たしたZ2は、艦長マックス・エカート・ヴォルフ少佐の指示により自ら座礁。
  力尽きたZ2の船体は放棄され、2つに折れた。イギリス軍に大敗したドイツ駆逐隊は壊滅し、Z2の命日は1940年4月13日となった。

• 海戦を生き残った乗員2600名は上陸し、ノルウェー軍の武器を使って陸上戦闘に参加した。山岳猟兵にとって彼らは嬉しい増援であり、
  港湾施設や車両、兵器を修理して陸軍を援護した。
• この海戦でドイツは港内の駆逐艦8隻を全て喪失、保有駆逐艦の半数を失う大打撃を受けた。対するイギリスの損害は駆逐艦2隻大破と1隻小破に留まる。
  幸い制空権を確保していたので戦線の崩壊は避けられたが、補給線を断たれてしまった事でナルヴィクは一度イギリス軍に奪還される事になる。
  ナルヴィク争奪戦を、チャーチルはこう綴っている。
  「ナルヴィクでは、わずか6000しかいない間にあわせの混成ドイツ軍部隊が、六週間ものあいだ、約2万の連合軍をよせつけなかった。
  ドイツ軍は、いったん市街地から撃退されたにもかかわらず、生きながらえて、連合軍部隊の撤退を見た……。
  (中略)
  我々は海上を支配しているので、無防備の海岸はどこでも急襲できたが、あらゆる障害にもめげず、はるかな距離を陸上で行動するドイツ軍に先んじられたのだ！」

• 艦の鐘とプレートは、ナルヴィク戦争博物館に展示されている。また残骸は現存しており、ダイビングスポットとなっている。

末尾の番号が若いほど、古いログになります。

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