Z25

• ドイツ海軍が建造した1936年A型駆逐艦の1隻。1938年4月23日、ブレーメン造船所に発注。ヤード番号W959が割り振られた。
  1939年2月15日に起工、1940年3月16日に進水し、同年11月30日に竣工を果たした。
  　
• 1941年6月26日、ノルウェーに向けて出港。ところがハウスゲン沖で座礁し、2本のスクリューを損傷したためブレーメンへと引き返した。
  時同じくして独ソ戦が勃発し、ドイツ軍300万が破竹の快進撃を見せていた。修理を終えたZ25は、9月23日から29日にかけてオーランド海に出撃。
  フィンランド湾で孤立する、逃げ遅れたソ連の艦隊に睨みを利かせた。11月、Z25はノルウェー方面へ移動。12月6日にトロムゼへと入港し、
  現地で第8駆逐艦隊に編入された。
• 12月16日、姉妹艦Z23、Z24、Z27とともにバレンツ海に進出。コラ半島沖合いで敵艦を捜し求めた。翌17日、Z25のレーダーは濃霧の中に
  紛れる敵艦2隻を探知。ソ連の駆逐艦と思われたが、実際は敵イギリスの掃海艇ハザードとスピーディであった。さっそく攻撃を仕掛けたが、
  濃霧と流氷に阻まれて正確な射撃が出来ず、スピーディに4発の命中弾を与えただけで終わった。
  　
• 1942年1月13日、Z25は機雷敷設を行うZ23とZ24を護衛。西水路に機雷原を作り上げた。1月29日、オランダのフリシンゲンへ回航。
  Z7と合流し、2月7日にフランスのブレスト軍港に到着した。この港に停泊するシャルンホルストとグナイゼナウ、プリンツ・オイゲンを
  ドイツ本国に帰投させるのだが、その帰路はドーバー海峡を突破するというものだった。つまり敵国イギリスの眼前を通る訳である。
  旅路にはイギリス軍が潤沢な物量で海を埋め尽くさんと展開していた。そしてZ25とZ7は、この絶望的な脱出劇の伴走者に選ばれていた。
• 2月11日、ブレストを出発。敵が海上封鎖する魔の海を突破するという絶望の船旅であったが、敵の度重なるミスと油断に助けられ、無事突破に成功。
  ヴィルヘルムハーフェン入港直前にプリンツ・オイゲンが大破したものの、沈没艦無しで全員生還という奇跡を起こして見せた。
• 奇跡の生還を果たした後も任務は続く。3月6日、Z25は駆逐艦3隻とともに戦艦ティルピッツを護衛して出撃。攻撃目標は、北極海を我が物顔で
  行き来するQP8船団とPQ12船団の撃滅であった。翌朝、ティルピッツに座乗するオットー・チリアクス提督は駆逐艦に敵船の捜索を命令。
  各駆逐艦は分散して獲物を捜し求めた。Z25は偶然ソ連の貨物船イヨラ(2815トン)を発見。午後に撃沈した。任務を終えたZ25はティルピッツの
  許へ移動。燃料補給を受ける手はずであったが、荒波と流氷に阻まれて失敗。このため3月8日にトロンヘイムへ帰投するよう命じられ、後退した。
• 3月28日、Z25、Z26、Z24はPQ13船団を攻撃するため出撃。船団を捕捉し、直ちに攻撃へと移る。夜遅く、貨物船バトー(4687トン)を撃沈し、
  7名の生存者を救助。また、沈没した英貨物船エンパイアレンジャーから61名の生存者を救助した。しかし翌29日午前8時49分、敵船団の護衛を
  していた敵艦トリニダードに捕捉されてしまう。優勢な戦力で、Z25やその僚艦に襲い掛かってきた。吹雪の中、両者は2900mにまで接近。
  まず標的にされたのがZ26であった。敵の矢面に立たされたZ26はすぐに命中弾を喰らい、大破させられる。Z26を撃破した敵は、次にZ25へと牙を剥く。
  だがドイツ側も黙ってはいなかった。Z26が攻撃を引き付けている間に魚雷の発射準備を整え、19本の魚雷を一斉に発射した。惜しくも命中は
  しなかったが、回避を強いて追跡の手を緩めさせた。この隙を突いてZ25とZ24は急速に離脱した。逃げ遅れたZ26は悲劇的な最期を遂げた。
• 吹雪が止まり、視界が急に開けてきた。すると後方から敵駆逐艦エクリプスが迫っているのが見えた。しかも敵は魚雷の発射体勢を取っている。
  追跡者の存在に気付いたZ25とZ24は即座に攻撃を開始し、損傷を与える。午前10時35分、スコールの中に飛び込んで追跡を振り切った。
  4月11日、PQ14船団とQP10船団の捜索に当たったが、会敵できず失敗に終わる。
• 4月30日午後、4隻の英駆逐艦に護られた敵の輸送船団を捕捉。4時間に渡って追跡を続けたが、敵の警備が厳重で近づく事が出来ない。
  だが恐るべき勇敢さを発揮し、一瞬の隙を突いてZ24とZ25が雷撃を敢行。貨物船ツィオルフスキー(2847トン)を撃沈し、敵駆逐艦アマゾンを
  大破させる戦果を挙げた。この日の夜遅く、味方のU-456の雷撃によって大破した敵軽巡エディンバラにトドメを刺すべくZ7、Z24とともに攻撃。
  4隻の敵掃海艇と敵駆逐艦が出現し、乱戦状態となる。Z25は敵駆逐艦フォレスターと干戈を交える。途中でZ24が加勢し、フォレスターを撃破。
  攻撃目標のエディンバラはZ7が撃沈したが、奮戦むなしくZ7も撃沈された。敵の砲弾が降り注ぐ中、210名の漂流者を救うべくZ24が救助を担当、
  Z25が目くらましの煙幕を展開した。不運にもZ25の無線室に命中弾を受け、4名が死亡し7名が負傷した。だがZ24は無傷で生存者を収容、
  見事脱出してみせた。
• 5月16日、トロンヘイムからキールに向かうプリンツ・オイゲンをZ5や2隻の魚雷艇と護衛。キール到着後、自身も修理を受ける事になり、
  11月頃まで戦線離脱。

• 11月11日、シュヴィーネミュンデから出発する軽巡ニュルンベルクを護衛。無事トロンヘイムまで送り届けた。
  　
• 1943年2月、ドイツ本国を経由してフランスに進出する予定だったが、エンジントラブルにより3月5日に中止。この問題は思いのほか深刻で、
  8月にオーバーホールのため本国まで戻らなければならなかった。不幸の連鎖は続き、ダンツィヒ湾で海上試験をしている最中に爆発事故が
  発生し、機関が故障。更なる修理が必要になってしまった。
  　
• 1944年2月13日、ようやく任務に復帰したZ25はエストニアのレバルへ回航。現地で3隻の駆逐艦と合流し、フィンランド湾で機雷敷設に従事。
  東岸からソ連軍の砲撃を受けながら、3月12日にナルバ湾へ機雷を敷設した。
• 6月28日、ソビエトの侵略を受けるフィンランドが降伏した時に備え、タンネ・オスト作戦に参加。重巡洋艦リッツォウを護衛してウテ島沖で
  待機していたが、フィンランドが降伏しなかったため作戦中止、反転離脱した。戦況は日に日に悪化し、ついに東部戦線が崩壊。地上を埋め尽くす
  ソビエト兵が大挙して東プロイセンに殺到してきた。デーニッツ提督は生き残っていた艦艇をかき集め、砲撃部隊を結成。Z25も組み込まれた。
• 7月30日、駆逐艦3隻とともにリガ湾へ進出。侵攻してくるソビエトの大群に向けて砲撃を開始した。続いて8月5日にプリンツ・オイゲンを
  護衛して出港。8月19日から翌20日にかけて、エストニアのエセル島とラトビアを砲撃した。Z28と協同で、エストニアのバルチシュポートから
  370名の難民をリバウへ輸送。9月15日から20日にかけては、孤立していた陸軍をレバルから避難させた。Z25の奮闘により2万3172名が救われた。
  10月10日、メーメルへ100名の増援を輸送。翌11日に200名の女性の補助部隊を乗せて出港。帰りしなにメーメル近辺のソ連軍を砲撃している。
  砲撃の振動で燃料タンクの1つから燃料漏れが確認された。
• 11月19日から24日にかけて、サーレマー島ソルバメ半島のソ連軍を砲撃するリュッツォウとプリンツ・オイゲンを支援。12月に帰港し、
  整備と補給を受けた。
  　
• 1945年1月29日、プリンツ・オイゲンと魚雷艇2隻とともにケーニヒスベルクの東と南を砲撃。孤立していた陸兵の後退を支援し、本隊と
  合流させる事に成功した。2月20日、ゴーテンハーフェンから本国へ脱出する難民船をザスニッツ沖まで護衛。3月26日までに2万2000名の難民を
  コペンハーゲンまで送り届けた。5月5日、4万5000名の難民を乗せた輸送船を護衛。5月9日には2万名を乗せた客船をグリュックスブルクまで護送。
  これが最後の任務となった。5月10日にZ25は任を解かれ、長く苦しい戦いは幕を下ろした。
  　
• 終戦後、Z25はヴィルヘルムハーフェンに回航。賠償艦として敵国イギリスに持っていかれ、1946年1月6日にスコットランドのローシスに到着した。

末尾の番号が若いほど、古いログになります。

'コメント/Z25/' には、下位層のページがありません。