Z28

• ドイツ海軍が建造した1936年A型駆逐艦の一番艦。1936年A型駆逐艦は前級1936年型の武装を強化したタイプだが、唯一Z28のみ嚮導艦として設計。旗艦設備を搭載した分、他の兄弟と比べて主砲が単装砲のままだった。要目は全長127m、全幅12m、排水量2596トン、最大速力36ノット、出力7万馬力、積載重油804トン。主砲は40口径14.91cm単装砲4基、対空兵装は80口径3.7cm連装高角砲2基と65口径20mm単装機銃5基、水雷兵装は53.3cm四連装魚雷発射管2基と魚雷16本、対潜装備は爆雷投射機4基と機雷60個。レーダーは対空・水上兼用のFuMO21を搭載していた。
  　
• 1938年4月23日、デジマーク社に発注。1939年11月30日、ヤード番号W962の名を与えられてブレーメン造船所で起工。1940年8月20日に進水し、1941年8月9日に竣工した。まずはスカゲラク海峡やカテガット海峡方面で警戒任務に従事。
• 1942年4月、ノルウェー方面へ進出する事になりトロンヘイムに寄港。5月9日、Z30や魚雷艇とともに補給艦ディットマルシェン、重巡アドミラル・シェーアを護衛して出港。戦艦ティルピッツが鎮座するナルヴィクまで護送した。7月2日、レッセルシュプルンク作戦に参加。レイキャビクからアルハングリスクに向かうPQ17船団を撃滅するため、ドイツ海軍はトロンヘイムにいるティルピッツとアドミラル・ヒッパー、ナルヴィクにいるリュッツォウ(元ドイッチュラント)とアドミラル・シェーアに出撃命令を下した。Z28はティルピッツとアドミラル・ヒッパーがいるグループに所属し、同日20時に出撃。ところがZ28を除く駆逐艦3隻が座礁してしまい、急遽作戦を中断してナルヴィクへ入港する事になった。難を逃れたZ28は唯一の護衛としてしっかり護送し、7月3日に到着した。
  • ティルピッツ及びアドミラル・ヒッパーの移動は連合軍も知るところになり、PQ17船団33隻に分散を命じた。しかしこの判断は最悪の悪手だった。船団の分散はドイツの諜報機関にも伝わり、水上艦隊を率いる司令官であるオットー・シュニーヴィント大将は直ちに出撃の許可を求めた。

• 7月5日15時、Z28は駆逐艦6隻や水雷艇2隻とともにティルピッツもアドミラル・ヒッパー、アドミラル・シェーアを護衛してアルテンフィヨルドを出撃。PQ17船団が取りそうな航路を遮断すべく北東に針路を取る。ところが、既にPQ17船団はUボートと空軍機に蹴散らされており、喜ばしい報告が続々と寄せられていた。船団を分散させた事で、簡単に仕留められる海のおやつになっていたのだ。また艦隊はソ連の潜水艦K-21やカタリナ飛行艇等に発見されており、敵の罠を疑ったエーリヒ・レーダー提督によって21時30分、アルテンフィヨルドに引き上げるよう命令が下った。悲しいかな、水上艦隊は手ぶらで帰らなければならなかった。
• 9月24日から28日にかけて、バレンツ海のノヴァヤゼムリヤ島沖でアドミラル・ヒッパー、Z23、Z29、Z30とともに機雷敷設を実施。北側に機雷原を作る事で敵船団を南側へ迂回させ、ノルウェーから迎撃しやすくする狙いがあった。10月1日、推進器修理のためボーゲン湾に戻るアドミラル・ヒッパーを護衛。ティルピッツとアドミラル・ヒッパーを護衛してボーゲン湾を出発し、10月24日にトロンヘイムへ送り届けた。
  　
• 1943年1月7日、シャルンホルストとプリンツ・オイゲンを僚艦4隻とともに護衛してグディニアを出港。ノルウェー方面に向かおうとしたが、沿岸の敵飛行場が活発化していたため一度引き返す。機会が訪れるまで待機する事となったが、2月10日にシャルンホルストがUボートと衝突事故を起こし、2月26日まで修理。グディニアを発ったのは3月3日の事だった。敵の目を引き付けるため、5日間バルト海で演習。それからスカゲラク海峡に向かった。空襲を避けるため荒天を突破する事になり、猛烈な吹雪と暴風の中を25ノットで北上。伴走者の駆逐艦3隻は何かしらの損傷を負ったが、唯一Z28だけは無傷で乗り切った。3月14日、ナルヴィクに到着。損傷を受けた3隻はアルテンフィヨルドに向かっていった。4月2日、Z4とともにアルタフィヨルドからハーシュタに向かっていたZ28は座礁事故に見舞われる。何とか離礁し、修理のためトロンヘイムに回航された。7月24日に空襲に巻き込まれるも、大した被害は無かった。しかし座礁時の損傷が思いのほか深く、本格的な修理のためブレーメンに戻らなければならなかった。
  　
• 1944年1月7日、クリスチャンサンに本拠を置く第6駆逐艦群に編入。2月12日から翌13日、僚艦2隻とともにスカゲラク海峡で機雷を敷設。2月21日、エストニアに回航。3月12日、Z25やZ29とともにフィンランド湾のソビエトの陣地を砲撃しながらナルバ湾に機雷を敷設した。その後はリバウ、レヴァル、ラトビア間を往来する船団を護衛し続けた。
• 6月24日午前7時、リュッツォウやZ36等とともにゴーテンハーフェンを出撃。18時にリバウから派遣された第2潜水隊や3隻の魚雷艇と合流し、ウトー島近海に進出。タンネ・オスト作戦のため待機する。ソ連軍の攻撃を受けるフィンランドが降伏した時に備え、ソ連に占領される前にスールサーリ島を占領する計画だった。しかしフィンランドは降伏する事無く戦い続け、作戦は中止となった。7月8日、帰港。
• 膨大な数のソ連軍によって中央軍集団が壊走し、いよいよ東部戦線が崩壊。東プロイセンやバルト三国に赤い津波が押し寄せ始めた。撤退する陸軍や避難する住民の時間稼ぎをするため、Z28は3隻の駆逐艦とともに出撃。7月30日と8月1日にリガ湾からソビエトの軍勢を砲撃した。8月5日、エストニアのオーセル島を砲撃するプリンツ・オイゲンを護衛。8月19日午前7時、プリンツ・オイゲンや魚雷艇T23、T28とともにゴーテンハーフェンを出港。風雲急を告げるリガ湾に急行した。翌20日、トゥクムス砲撃に参加。上空にはプリンツ・オイゲンのアラド水上機3機が旋回していたが、地上のドイツ軍も協力。航空機、戦車隊、観測隊が砲撃を手助け。北方軍集団と中央軍集団を分断したソ連軍部隊に正確かつ強烈無比な火力が叩き込まれ、目標物を破壊するたびに陸軍から歓声が上がった。トゥクムス市内にあった48輌のT-34が破壊され、ソ連軍守備隊は瀕死となった。そこへ臨時の戦車師団シュトラハヴィッツが市内に突入し、奪還に成功。北方軍集団と中央軍集団の連絡を回復させる快挙を成し遂げた。艦隊は空襲を警戒して足早に撤退したが、何の反撃も無かった。そして陸軍から「適切なる支援を感謝する」との通信が届き、戦勝に花を添えた。8月21日、ゴーテンハーフェンに帰投。
• 9月16日、エストニアのパルチシュポートからゴーテンハーフェンに向かっていた軍隊輸送船モンテローザが触雷し、立ち往生していた。モンテローザには沢山の難民が乗っており、既に浸水で200名が溺死していた。窮地のモンテローザのもとへZ28とZ36が駆けつけ、護衛を実施。その甲斐あってモンテローザはゴーテンハーフェンに辿り着く事が出来た。4日後、ソ連軍に包囲されたレヴァルの難民救助に協力。最終的に2万3172名が救出された。9月21日、Z25とともにバルチシュポートからリバウまで370名を輸送。翌22日、オーランド海を航行中の難民輸送船をゴーテンハーフェンまで護送。縦横無尽に走り回り、戦火に追われた難民たちを献身的に救助し続けた。一通り救助が終わると再び砲撃支援に身を投じ、10月10日と23日にメーメルのソ連軍を砲撃。22日と24日はサーレマー島のソルバメ半島北部に居座るソ連軍を砲撃したが、10月24日にソ連軍機から8発の爆弾投下を受けて損傷。9名の乗組員が死亡した。修理のためシフィノウィシチェに向かい、長らく戦線離脱を強いられた。
  　
• 1945年2月25日、修理完了。ゴーテンハーフェンからザスニッツに向かう遠洋定期船ドイッチュラントを護衛した。その2日後、ダンツィヒのドイツ人を避難させる。しかし3月6日、ザスニッツ港内で空襲を受けて2発の爆弾が命中。多数の死傷者を出しながら撃沈された。敵の攻撃で沈没した最後の独駆逐艦だった(自沈を含めると5月3日のZ43が最後となる)。残骸はしばらく残っていたようだが、風化によって自壊した。

末尾の番号が若いほど、古いログになります。

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