マエストラーレ

• イタリア海軍が建造したマエストラーレ級駆逐艦1番艦マエストラーレ。イタリア語で北西風を意味し、ローマからの風を指す。1931年9月25日、アンコーナ造船所にて起工。1934年4月15日に進水し、同年9月29日に竣工した。要目は排水量1670トン、全長106.7m、全幅10.2m、出力4万4000馬力、搭載燃料520トン、定員153名、最大速力38ノット。武装はOTO　50口径12cm連装砲2基、39口径40mm単装機銃2基、76口径13.2連装機銃2基、53.3cm三連装魚雷発射管2基、機雷投射機2基、機雷52個。フレッチア級やフォルゴーレ級で問題視された復元性を改善し、再設計された艦隊型駆逐艦。完成度が非常に高く、以降の駆逐艦はマエストラーレ級を参考にして建造されたほど。
  　
• 1936年7月17日、スペイン内戦が勃発。フランコ総統率いる反乱軍の国粋派vs政府軍の共和国派の戦いが始まった。一斉蜂起と艦隊掌握に失敗し、制海権を失った国粋派は植民地モロッコからスペイン本土に精鋭部隊を送れず、苦戦。窮地に立たされたフランコ総統は独伊に支援を要請。さっそく両国から空軍と海軍が派遣された。マエストラーレ級4隻はイタリアより出発する輸送船をスペインまで護送する任務に従事。続いてモロッコを発ってスペイン本土に向かう国粋派の精鋭部隊輸送の手助けをすべく、タンジェに駐留した。1939年4月7日より行われたアルバニア侵攻では他の兄弟が参加する中、マエストラーレだけ欠席した。
  　
• 1940年6月10日、イタリアはドイツに味方して第二次世界大戦に参戦。対峙するは地中海を隅々まで支配する敵イギリス海軍。マエストラーレはグレカーレ、リベッチオ、シロッコとともに第10駆逐隊に所属し、地中海で開戦を迎えた。兄弟の中では唯一レーダーを装備しておらず、代わりに照明弾用の12cm榴弾砲を装備していた。開戦と同時に重巡ポーラ、トレント、ボルヅァーノとともに第10駆逐隊はメッシーナを出港し、敵艦隊の捜索を行ったが捕捉できず。意気軒昂に参戦したものの準備不足で強引に開戦したため、イタリア軍の戦備が全く整っていなかった。特に北アフリカにあるイタリア領リビアの陸軍は本土より物資が欠乏しており、彼らへの補給が急務となった。7月2日に出港したマエストラーレは、トリポリから戻ってきた軍隊輸送船エスペリア、ビクトリアと合流。魚雷艇4隻の護衛とともにナポリへ送り届けた。
• 7月6日、ナポリからは4隻が、カターニアからは1隻の補給船が出港。2000名以上の増援、72輌のM11/39中戦車、232輌の戦闘車両、約1万トンの物資、約6000トンの燃料を運んでおり、是が非でもリビアに送り届けなければならなかった。ところがイタリア軍情報部は敵の強大な艦隊が出現するとの情報を掴み、主力艦隊を二分して出撃させる事になった。マエストラーレはリッカルド・パラディーニ中将率いる第2艦隊に所属してタラントを出撃した。片割れの第1艦隊が敵襲を受けるも、無事補給船団は7月8日午後にトリポリへ入港。補給任務に成功した。タラントへ帰路につくイタリア艦隊であったが、敵の偵察機に発見された事で敵艦隊に位置を知られる。7月9日正午、プンタ・スティーロ沖にて両艦隊が接近し、プンタ・スティーロ沖海戦が生起する。敵空母から発進した雷撃機が襲い掛かってきたが、幸い命中せず。続いて砲撃戦が始まる。寡兵ながらイタリア艦隊は奮戦し、敵軽巡1隻と駆逐艦2隻に損傷を与える。しかし味方戦艦ジュリオ・チェザーレが砲撃で損傷したため、マエストラーレは他の駆逐艦と協力して煙幕を展開。追撃を防ぎ、ジュリオ・チェザーレを守りきった(第10駆逐隊は到着が遅れて戦闘に参加できなかったとも)。双方ともに損害を与えたが決定打は無く、両軍は帰港。損害の上では引き分けだったが、イタリア側は目的の補給を達成した。その後はリビア行きの船団を護衛したり、機雷敷設任務に従事。
• 7月27日、リビア行きの補給船7隻(TVL船団)がナポリを出港。第4魚雷艇隊の4隻が護衛についていたが、カターニアからもマエストラーレ率いる第10駆逐隊が出撃し、護衛に加わる。道中で敵潜オズワルドに襲撃されたものの、魚雷艇を狙った雷撃は命中せず。何ら損害を受ける事無く、8月1日にトリポリへ到着した。8月9日と10日の夜、魚雷艇スピカやアンタレスに護衛されながらグレカーレ、シロッコ、リベッチオとともにパンテレリア島沖に機雷216個を敷設。8月23日にボン岬沖で敵駆逐艦ホスタイル(1340トン)が触雷して雷撃処分されているが、マエストラーレ級のいずれかが敷設した機雷による戦果だという。11月11日、タラント空襲に巻き込まれるも被害は無かった。
  　
• 敵軍のジェノヴァ砲撃を知ったイタリア海軍は、戦艦ヴィットリオ・ヴェネトを旗艦とした迎撃艦隊を編成。1941年2月8日19時、マエストラーレ、リベッチオ、シロッコ、グレカーテからなる第10駆逐隊はラ・スペツィアを出撃。メッシーナからも重巡トレント、トリエステ、ボルツァーノを基幹とする艦隊が出撃した。翌9日午前8時、ボニファシオ海峡の西方でメッシーナから出港してきた味方艦隊と合流し、敵艦隊を求めて北上。しかし迎撃は間に合わず、追撃に移行したもののヴィシーフランスの船団を敵と誤認してしまう。砲撃寸前のところで取り止めとなったが、既に敵は去っていて失敗に終わった。
  • 1941年2月、北アフリカではイタリア軍が大敗していた。既に13万の兵士が捕虜になり、砲1300門と戦車400輌が鹵獲。リビア西部のトリポリタニアまで後退し、本国からの移民は最後の時が来るのを怯えて待っていた。2月12日、そんな北アフリカの地にドイツ軍のエルヴィン・ロンメル中将が降り立った。ロンメル中将率いるドイツアフリカ軍団はイタリア軍を引っ張りながら前進に次ぐ前進を行い、敵軍の反撃を排して東へ突き進んでいった。4月には補給港トブルクにまで到達するも、敵軍の強固な防備に阻まれて苦戦。また性急過ぎる進撃は戦車の燃料不足や修理部品不足を招き、ドイツアフリカ軍団への補給は急務となりつつあった。

• 4月22日、ドイツアフリカ軍団に物資を届ける補給船4隻がナポリを出発。マエストラーレは間接護衛隊に加わり、軽巡2隻や僚艦シロッコとともに遠方から船団の航行を援護した。ところが翌23日、マルタ島から敵駆逐艦4隻が出現し、イタリアの武装商船エーゲが撃沈される。幸運にも補給船団は攻撃を受けず、4月24日にトリポリへ到着した。5月11日、独伊の補給船6隻が駆逐艦カミチア・ネーラとアヴィエーレに護衛されてナポリを出港。マエストラーレは間接護衛隊に加わり、敵襲は無く、5月14日にトリポリへ到着。補給任務を完遂する。5月26日、駆逐艦ヴィヴァルディとアントニオ・ダ・ノリに護衛された6隻の補給船団がナポリを出発。トリポリに到着するまで、巡洋艦カルドナや駆逐艦グレカーレと警戒任務に従事した。道中でマルタ島より飛来した敵機の攻撃を受け、汽船セバスティアーノヴェニエとマルコフォスカリーニが損傷したが、5月28日にトリポリへ無事到着した。7月7日、4隻の軽巡洋艦や5隻のナヴィガトリ級駆逐艦、グレケーレ、シロッコとともにシチリア海峡へ機雷を敷設。8月19日、パンテッレリーア島北方でトリポリ行きの補給船団が敵潜の襲撃を受けたため、シロッコやグレカーレとともに急行。同日夜に護衛と合流する。翌20日、敵潜ユニークの雷撃で兵員輸送船エスペリアが撃沈。1170名中1139名以上を救助し、同日中にトリポリへ到着した。

• 9月24日、敵は牙城マルタ島を強化するため、ハルバード作戦を開始。ジブラルタルから大量の輸送船と護衛艦隊を出港させた。9月26日午前7時18分、イタリア空軍の偵察機が敵艦隊を発見。更にスペインの民間機も別働隊を発見して通報したため、イタリア海軍は同日夜にタラントからヴィットリオ・ヴェネト率いる迎撃艦隊を出撃させた。マエストラーレも敵船団迎撃のため、巡洋艦アブルッヅィ、アッテンドロ、駆逐艦シロッコ、グレカーテとともにシチリア島パレルモを出撃。しかし敵の戦力は予想を遥かに上回るほど圧倒的であり、最高司令部から「優勢でない限り交戦してはならない」と事前に命じられていた事もあって交戦せず退却。攻撃は空軍に委ねられる事になった。結果、マルタ島は大幅に強化されてしまった。11月7日、第10駆逐隊の司令艦に指定される。
• その頃、北アフリカ戦線ではエルヴィン・ロンメル中将率いるドイツアフリカ軍団が圧倒的優勢な敵軍を退けて快進撃を続けていた。彼らを支援するため、イタリア海軍は補給船団を編成。ドイツ船デュースブルクとイタリア船サンマルコ、輸送船サギッタ、リーナコレッタド、ジュゼッペ・ボルピ、ミナティライン、マリアからなる「デュースブルク船団」を結成した。船団には1万3290トンの物資、1579トンの弾薬、389輌の各種自動車、1万7821トンの燃料、145名のイタリア兵、78名のドイツ兵が分乗していた。護衛の駆逐艦はリベッチオ、エウロ、フルミネ、オリアーニ、グレケールで、マエストラーレはウゴビス・チャーニ大佐が座乗する旗艦となった。11月8日、7隻からなる補給船団がシチリア島を出発。間接援護として重巡トリエステ率いる別働隊も出撃した。マルタ島は独伊空軍による猛爆を受けており、現地の敵艦は数週間出撃できないだろうと考えられていた。このため脅威は敵艦ではなく敵機とし、マルタ島の東を通る航路が選択された。しかしこの動きは敵軍に読まれ、猛攻を受けていたにも関わらず元気いっぱいなマルタ島より大戦力を投入。13時55分、パルティヴェント岬東方を航行中に、マルタ島より飛来したメリーランド偵察機に捕捉されてしまう。これが悪夢の始まりだった。
• 11月9日午前0時39分、敵の巡洋艦部隊がデュースブルク船団を発見。イタリア海軍が苦手とする夜戦を仕掛けてきた。レーダーを持っていない船団は、敵の出現に気付いていなかった。マエストラーレは二列で進む船団の先頭を9ノットで航行していた。左舷にはリベッチオとオリアーニがいてサギッタを護衛。中央にはデュースブルク、サンマルコ、駆逐艦エウロ、フルミネが続航している。午前0時47分、敵巡洋艦部隊が攻撃命令を受領。これを味方の重巡トリエステが受信し、船団に警告を発したが、敵の電波妨害により届かなかった。午前0時57分、敵艦隊は視界外から一斉に砲撃を開始。奇襲を受けた船団は、ウゴビス大佐の指示で右へ一斉回頭する。まず最初にグレケールが集中砲火を浴び、大破炎上。マエストラーレは敵軽巡洋艦に砲撃される。当初敵艦は出現しないと思われていたため、船団は敵機の空襲を受けたと勘違いしていた。直ちにマエストラーレは左へ回頭、同時に護衛の駆逐艦2隻に対し煙幕の展開を命じ、それ以外の駆逐艦には集合を命じた。ところが、敵軽巡の砲撃で通信アンテナを破壊されたため、これ以上の指示は出せなくなってしまった。一方的な砲撃を受けて次々に沈められていく輸送船。駆逐艦エウロとフルミネが反撃に転じるも、逆に集中砲火を受けて午前1時6分にフルミネが撃沈。エウロは激しい砲火を掻い潜り、マエストラーレの近くまでやってきた。ウゴビス大佐は魚雷攻撃を命じ、エウロに雷撃体勢を取らせた事で敵巡洋艦部隊の動きを鈍らせた。その直後、エウロは敵の集中砲火を受けたが致命傷には至らず。間接援護の重巡トレントとトリエステが救援に駆けつけたが、敵艦隊との間にデュースブルク船団がいて火力を発揮できずにいた。瓦解した隊列を組み直すべく、マエストラーレはリベッチオ、オリアーニ、エウロを率いて東へ退避。既に浮いている輸送船の姿は無かった。その後、駆逐艦を率いて勇猛果敢に突撃を開始。一斉射撃を行ったものの、敵に損害を与える事は出来なかった。午前2時5分に敵艦隊が退却した事で海戦は終結した(デュースブルク船団の海戦)。翌朝、マエストラーレ、エウロ、リベッチオの3隻は生存者の救助を開始。704名を救助したが、そこへ敵潜の襲撃を受け、リベッチオが被雷。エウロが曳航を試みたが、浸水激しく道中で断念。リベッチオから乗組員を救助したのち、被雷から4時間後に放棄された。こうして兄弟最初の犠牲者を出た。補給は失敗に終わり、ドイツアフリカ軍団は苦しみに喘ぐ事になる。11月19日、トリポリからナポリに帰投する輸送船2隻を護衛して帰路につく。12月1日、オリアーニ級駆逐艦ヴィンチェンツォ・ジョベルディとともにギリシャのパトラを出港。北アフリカ戦線向けの燃料50トンを緊急輸送し、リビアのデルナ港へ入港。無傷で成功させ、翌2日に帰投した。

• 北アフリカにいるドイツアフリカ軍団は、潤沢な物資を持つ敵軍を前に苦戦を強いられていた。彼らに補給物資を届けるべく大規模戦力による船団輸送を敢行する事になった。12月16日18時40分、イアキーノ提督率いる大船団と護衛艦隊がタラントを出港。戦艦リットリオに率いられ、マエストラーレも出撃する。イタリア空軍の偵察機が船団護衛中の敵艦隊を発見し、イアキーノ提督は迎撃を命令。夕刻、味方の航空攻撃を受けて対空砲火を上げる敵艦隊を視認し、突撃を開始する。12月17日17時42分、リビアのシルテ湾にて会敵し、第一次シルテ湾海戦が生起した。敵艦隊はイタリア艦隊の強大さを悟って退避行動に入り、イアキーノ提督もまたイタリア海軍が苦手とする夜戦を防ぐため短期決戦を企図。突撃を開始する。敵艦隊は煙幕を張って逃げようとするが、イタリア艦隊の砲撃の方が早かった。味方重巡ゴリツィアの砲撃を皮切りに続々と砲声が轟く。マエストラーレは砲撃で敵駆逐艦ニザムに至近弾を与えて損傷させた。元々短期決戦のつもりだったため、18時28分にイタリア艦隊は早々に砲撃を切り上げた。何とか振り切った敵艦隊であったが、逃げた先に機雷原があり軽巡1隻と駆逐艦1隻を触雷で失った。イタリア側は一切の損傷を負わず、トリポリとベンガシの港へ補給船団を送り届ける事に成功した。
  　
• 1942年1月3日16時、戦艦ドゥーリオ、軽巡カリバルディ、モンテクッコリ、アッテンドロ、駆逐艦オリアーニ、シロッコ、ヴィンチェンツォ・ ジョベルティ、マロチェロとともにナポリを出撃。トリポリに向かう補給船団の間接援護を行い、1月5日に船団はトリポリへ到着。今回の輸送は成功を収め、翌6日午前4時20分にタラントへ帰投。
  • この補給成功はドイツアフリカ軍団に大きな力を与えた。揚陸された戦車や燃料により、ドイツ軍の戦車は84輌、イタリア軍の戦車は89輌に増加。300機以上の空軍機が同時に作戦行動出来るようになり、十分な補給を受けられたロンメル中将はトリポリタニアへの脅威を取り除くため、1月20日夜より攻勢を開始した。
• 1月22日、トリポリに向かうT18船団を護衛。上空にはドイツ空軍のユンカースJu88が旋回していたが、1月24日にトリポリの北東で敵機の雷撃を受け、兵員輸送船ビクトリアが撃沈されている。マエストラーレらは救難活動を行い、1400名中1046名が救助された。2月21日、K7作戦に参加する補給船2隻がトリポリに向けて出発。13時30分、ギリシャのコルフ島からも2隻の補給船が出港し、これを駆逐艦4隻や魚雷艇クレオとともに護衛する。敵は潜水艦による襲撃を試み、魚雷艇キルケーと駆逐艦ウソディマーレを失ったが、概ね成功した。その後、レーダーを装備していないマエストラーレはピレウスで改装工事に入り、一時戦線離脱。12cm榴弾砲を撤去し、12cm単装砲に換装。後部魚雷発射管を取り外して37mm単装機関砲2基や20mm単装/連装砲を装備、対空性能を底上げした。8月8日、改装工事完了。

• 8月10日、敵はマルタ島への大規模補給計画「ペデスタル」を企図し、潤沢な物資を載せた大船団を出発させた。これ以上マルタ島が強化されれば北アフリカへの補給路が遮断されてしまうため、独伊ともに少ない戦力をかき集めて迎撃を試みる。しかしイタリア海軍の燃料事情は悪化の一途を辿っており、ついに艦隊用燃料が枯渇。大型艦の出撃が困難になり、出撃できるのはマエストラーレのような駆逐艦か、潜水艦に限られた。ドイツ海軍からはU-73を始めとするUボート隊が派遣され、絶望的な戦いに臨む。しかしイタリア艦隊は出撃したものの、マルタ島や敵艦隊からの空襲を警戒して戦闘には参加せず帰投。空軍機は全て攻撃に向けられており、エアカバーが無い状態で活動すればマタパン岬の二の舞になってしまう事を恐れた結果だった。11月4日、北アフリカ行きの補給船団を護衛してナポリを出港。道中で空襲を受けるも無傷で往来に成功する。だが、無傷で終えられるのは今回で最後になってしまった。12月1日夜、駆逐艦グレカーレ、ミトラリエーレ、アスカリと協同で224個の機雷をシチリア島西方に敷設。
  　
• 1943年に入ると、ドイツアフリカ軍団の戦線は最後の拠点チュニス付近まで押し込められていた。ベンガジとトブルクを失い、残った補給港はトリポリだけだった。イタリアからはしきりに増援部隊が送られ続けており、マエストラーレも護衛任務に追われていた。1月9日20時、チュニジアへの兵員輸送船団護衛中に触雷。大破航行不能に陥ってしまう。駆逐艦コルサロが救助しに近づいてきたが、触雷して沈没。乗員187名全員が死亡した。このままでは自軍が敷設した機雷原へ流されてしまうところだったが、乗組員の機転で2つのアンカーチェーンを繋ぎ、錨にした事で艦を停止させる事に成功。やがて救援部隊が到着、曳航されてチュニジアのビゼルトへ入港した。現地で応急修理を受けている時に空襲されるも、幸い被害は無かった。1月31日、護衛水雷艇アニモソに曳航されながら出港。3隻の魚雷艇が護衛についたが、1隻が触雷沈没してしまっている。命からがらトラパーニへ帰り着き、数回の応急修理を受けたのちナポリに回航。4月1日、ナポリ空襲で艦首を大破した駆逐艦コラッツィエーレに曳航されてナポリを出発。2日後にイタリア北西部の港湾都市ジェノヴァへ到着し、ドックに入渠。8月7日深夜、ランカスター爆撃機112機によるジェノヴァ空襲に遭遇したが、市街地への爆撃だったため難を逃れた。
  　
• 1943年9月9日、イタリアは降伏。ジェノヴァに停泊していた艦艇は敵国に降るため即座に出港したが、マエストラーレは入渠中だったためドック内で自沈させられる。これで生涯を閉じるかに見えたが、翌日進駐してきたドイツ軍の手で救出され、ドイツ海軍所属となる。比較的浅い場所に沈んでいたため浮揚、復旧工事を開始する。ところが、一旦中断していたジェノヴァへの爆撃が10月21日より再開され、連日のように大量の爆弾が落とされる。造船所、市街地、港湾施設等が破壊され続け、マエストラーレの復旧工事を妨害。1944年9月4日の大空襲では在泊中の魚雷艇や駆潜艇が多数撃沈されるも、マエストラーレは生き残った。1945年に入ると戦況はより絶望的になり、地上の戦線がジェノヴァの方へと迫ってきた。4月20日、北部イタリアに潜んでいたパルチザンが一斉蜂起。ジェノヴァ周辺でも戦闘が生起した。
  　
• 1945年4月24日、ドイツ海軍はマエストラーレの復旧を断念し、閉塞船として自沈させた。その僅か3日後にジェノヴァは陥落した。戦後に残骸が引き揚げられ、解体。

末尾の番号が若いほど、古いログになります。

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